新木

きみの鳥はうたえるの新木のネタバレレビュー・内容・結末

きみの鳥はうたえる(2018年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

だいぶよかったです。佐藤泰志函館映像化作品のなかでは群を抜いていちばん好き。

長尺ではないのだが、ワンカットワンカットが気持ち長めでとても印象的であった。それは、アルバイトをして生計を立てる彼ら彼女の大人になる前のモラトリアムの時間を表しているかのようにも映る。舞台も函館ということで、東京では作れないゆるくも温かな心地よい空気が漂っていた。
好きだったのは、「僕」と佐知子の出逢いのシーン。すれ違い様にカラダに触れられ、120秒待つ。しかも、誰もいない建物のなかから狙うショットなんて秀逸すぎる。しかし、なんでまあ2分なんだ。ヒマなこの主人公なら5分でも10分でも、待とうと思えばひと晩中だって待てるのに。そんなことを考えるのは野暮というものではありますが、どうせなら120秒を贅沢にカウントして欲しかった、!それほどここは邦画史上に残る名シーンである。
卓球、ビリヤード、ダーツ、書店でのいざこざ(トイレでのケンカ)などなど、ほかにも細かくいいシーンが数々。
個人的には石橋静河が前作あまり響かなく苦手だったのだけれども、本作は見事。身体のラインも妙によい。クラブでのひとりで踊るシーンは、なんでこんな長々と映しているんだろうと思うも、コンテンポラリーダンスをやっていると聞いて、納得(踊りはうまいですがその情報なければサムいな、と)。小さな違和感の積み重ねでふたりの男性の間を移りいく流れも、自然に見れました。なんといっても、ラストのバストアップ。セリフなしの無音状態がまあ持つ持つ。彼女がどんな言葉を吐くのか、正解はなくとも、それぞれに答えを持つであろう切り方は最高です。
本作で夜のシーンばかりの印象があった佑。最後に彼女を追い掛けたシーンは昼。ひと夏を通して、彼も彼なりに大きく変わろうとしているんですね。

撮影は近藤龍人かなと思いましたが、四宮さんという知らない方でこれも嬉しい発見でした。
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