つのつの

きみの鳥はうたえるのつのつののレビュー・感想・評価

きみの鳥はうたえる(2018年製作の映画)
4.2
凄く心地いい。
クラブ、バーでしこたま遊んで酔っ払って朝帰り。
そんな毎日は、ずっと続くかのように思えたのに些細な停滞や狂いで簡単に終わってしまう。

3人が暮らしてる日々が愛おしいのはどこまでも自由だから。
それは友人、恋人、家族、仕事といっためんどくさい人間関係の形にハマることはない。
彼らの関係を邪魔するのは、いつだって警察や先輩といっためんどくさい人間関係だった。
3人は会話をしている場面では、3人は同一画角に移ることは少ない。
カメラは話をする・聞く3人の各々の顔を切り取る。
心底楽しそうに話し合って笑いあっていても、根底には人間関係よりも己のパーソナリティに固執している三人の本音が現れていたのだろうか。
そんな不安定なバランスの日常が長く続くはずはない。
一瞬破綻しかける人間関係を取り戻すべく、もう一度バーで遊ぶ場面の三人のはしゃぎっぷりは前半のひたすらの無邪気さとは違って何かを誤魔化しているように見えた。

ラストで、「僕」は初めて自ら人間関係を築きに走る。
120秒数えたら自然に相手が向かってくる偶然を待つのではなく、自分の言葉で想いを伝える。
それは遅すぎたのかもしれない。
でも彼女の目から流れる涙は、この映画が丹念に描いてきた遊戯の時間=モラトリアムが彼らにとってはとても大切で愛おしいものだったことを物語る。
その表情は自分のパーソナリティよりも、たしかに僕という相手のことを想っているように見えた。
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