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きみの鳥はうたえるのaskのレビュー・感想・評価

きみの鳥はうたえる(2018年製作の映画)
4.3
「気持ちの割り切れなさ」を知った時に、大人になるのかな、と考えている。

人は多面的な生き物で、誠実さや実直さ、優しさでさえも一面的に切り取ることでしか感じることはできない。
少しでも方角が違えば、優しさは惨さになるし、誠実さは不器用に映り、愛情は執着になる。

嬉しい、楽しい、大好き!なんて誰かが歌っていたけれど、そんな単純で素直な想いだけが、日常を染める訳ではないことを知った時に、人は子どもから大人に成長するのだろう。

好きだと伝える速度を間違えただけで、伝わらなくなる想いがあって。
悲しみと怒りが同時に押し寄せても、嫌いになれない人がいて。
感情を細分化し、瞬間の表情を見極めるたびに、割り切れなくなっていく。

歳をとるにつれ、押し寄せる感情の起伏は、夜を超えるたびにさざ波に変わっていくことを知った。
想いを秘めておくことで、楽になる自分の狡さも知った。

けれど、どうしても言葉にならない想いを、言葉にしたって無駄だと押し殺す想いを、無理矢理にでも言葉にすることで、生まれるものがあることも知った。

不器用という言葉では片付けられない大人のどうしようもなさを愛していけたら、明日、息をするのが少し楽になるのかもしれない。

そんな風に、夏の終わりを知らせてくれた映画だった。
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