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大人のためのグリム童話 手をなくした少女のtaruponのレビュー・感想・評価

4.0
公開時見に行きたいと思いながら、見逃していた作品。同じアニメーションとはいえ昨日みた「天気の子」とは対極のタッチ。
グリムの「手無し娘」をベースにしているが、現代によみがえらせたと公式サイトなどにもある通り、昔話の再話とは一線を画している。
手無し娘の成長と自立の物語になっている。


以下、ネタバレ部分ありです。


生活に困窮した父親によって悪魔に売られた娘 
最初は、その運命から逃げる、おびえる 家の裏のりんごの木にのぼり、母が悪魔の狼に襲われても、恐怖からそれを見殺しにすることしかできない。その娘が父のために両手を切り落とされ、手を失ったところで自分自身で外の世界へ足を使って歩き出す。
川の女神さまの加護を得て王子と出会い結婚し、失った手の代わりに金の義手を与えられる。でも、その義手は冷たくて、形は手だけれども手の役割を果たしてくれるわけではない。王子がいる間は王子が手の代わりをはたしてくれたけれど、王子が戦争にいってしまってからは食事をとるのも身の回りのことも庭師に象徴される城の使用人の手を借りるしかなく自分自身のやるべきことはなく退屈な日々。
そして子どもを出産。喜びに包まれ、お乳も出て自分は子どもを育てたいのに義手ではお乳すら上げられず子どもは引き離される。この時点の手無し娘は、周りの人の力がなければ何もできず、それにフラストレーションを感じている。
そして悪魔がすり替えた手紙により戦場の王子からは王妃(手無し娘)と子どもを殺す命令がくるものの、庭師の機転により子どもとともに逃がされる。
そこからの手無し娘は、義手を捨て、口と腕と全身を使って赤ん坊の世話をし川の女神の加護を再び受けて安住の地を与えられ、自分の力で子どもを育て始める。
そして、最後には妻と子供を探しに来た王子がやってきて和解するけれど、お城にもどるのではなく、違う選択をする。
ここがミソですね。
手無し娘が自分の力で立ったからこそ、王子との関係性も変わったのだということが明らかになる。

これ、描写の細密なアニメでもなく、実写でもなく、あの輪郭線と色のみのあのタッチだからこそ良かったんだと思う。
残酷な場面もあのタッチだから象徴として理解できる、手無し娘が生活する力をつけていくところもあのタッチだから観れる(あれを実写の様に見せられたら逆に嫌だ) 
手無し娘のことをワイルドガールとあったけれど、本当にたくましく生き抜いていく生命力を感じさせる。

この題材だからこそ、あのタッチでの描き方というのが、すごく合っている作品だったと感じた。
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