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マザー!のpanpieのレビュー・感想・評価

マザー!(2017年製作の映画)
4.8
激しい炎で焼かれている女性が涙を流す所から始まる。
何?何?
一転して大きな宝石を満足気に台座に収めて微笑む男性。
顔も手も汚れているが満足そう。
途端に人の住んでいなさそうな廃墟の様な家に色が取り戻されベッドで寝ていた女性が起きる。


不条理の連続!
耐えられるギリギリのところで次の展開に落ち着きそれでは終わらないでしょと細胞の深い所で分かっているのに時計を見てまだ先が長いことを気付かされる。
ずっとドキドキしていた。
観終わった後の興奮がなかなか覚めやらなくてご飯支度をして夜を待った。
案の定皆が寝静まってから2回目を観てしまった。
なんという吸引力。
観る前から引っ張られていたけど私ダーレン・アロノフスキー好きかも。
変態か、やはり。笑

「レクイエムフォードリーム」でも掴まれたがあれから観たら今作のなんと洗練されていることか!
制作の舞台裏や特殊効果について語っている映像特典が付いているのだけどやばい、ハマった!
やっぱりDVD買おう。

一体何にハマったのか。
妻を演じるジェニファー・ローレンスは勿論のこと本当にこの夫婦の家が美しい。
部屋のドアは何処も開け放たれていてホールから放射状に部屋があるのかぐるぐると歩き回ると目的の部屋に着く。
家具は勿論食器に至るまで憧れしまくりでうっとりと観た。
それにしてもあの黄色の粉を水に溶かして飲むのは一体何?
とは思いつつもあのグラスも薄くて壊してしまいそうで素敵。
欲しい。笑

彼女が部屋を塗り替えていく。
外国って必ず住んだら壁を塗り替えてる。
面倒だけど自分の住む家を大切に考えていてせかせか時間に追われている日本人の私には到底考えられない。
ゆとりあるなぁ。
そんな生活ちょっと憧れる。


年の離れた詩人の夫と二人きりで隣家も全く見えない淋しい所にポツンと立っている美しい家に突然見知らぬ男が訪ねて来る。
その男はエド・ハリスだった。
そこからずっとザワザワが止まらない。
そして見知らぬ男は部屋ではタバコは吸わないでと言ったのに妻のいない間に吸うし持参した酒で夫と二人で一杯やり始める。
変な咳をするしトイレで吐いていてその脇腹には凄い傷があった事を妻は見逃さなかった。
何かがおかしい。(←「ゲットアウト」みたい。笑)
また来客が来た。
その男の妻だと言う。
えー妻を呼んだの?
全く厚かましい。
演じるはミシェル・ファイファー。
勝手に人の家に妻まで呼んで二人は居座り始める。
それだけでもストレス溜まるのに問題は夫。
何故見知らぬ人を家に上げて泊まらせるのか?
部屋がたくさんあるからって言われても全く意味が分からない。
若い妻は何度か夫にそれを言っても何が変なんだ?と言い返される。
えー?
この夫も変。
なんじゃこいつら。
まぁ夫役がハビエル・バルデムってだけで普通ではないのだろうとは初めから予想はついていたけど。笑
さあ役者は揃った。
どんな展開になるのか。


想像を超えて来て予測は全くつかなかった。
「スリービリボード」を超えた。
ストーリー的には全く違うけれどあれも予想が付かない展開に口ぽかーんだったけどそれ以上だった。
途中で幸せな夫婦二人の時間になるには残り時間があまりにも長くて身構えていたのに私の口はぽかーんどころか始終あんぐりと開いたままだった。
まさに不条理の連続!
不躾な夫婦がまだ良かったのかと思ってしまう程の後半の理解不能の怒涛の展開!
美しく化粧を施しドレスも彼女を引き立てる程にぴったりなジェニファー・ローレンスがボロボロになっていく。


あれ程優柔不断を通り越したいい振りこき夫に渡すものかと言っていた妻は何度も一瞬寝落ち仕掛けるがそれを待っているかの様に夫は彼女をずっと怖い顔のまま彼女の正面で椅子に腰掛け待っている。
〝早く寝てしまえ〟
夫の心の声が聞こえてくる。
ドキドキが止まらない。
あ、寝てしまった!
…ああ、なんて事!
彼女の手から奪われてしまった大切なある〝もの〟は人々の波に消えていく。
驚いて涙も出なかった。
こんな事になるなんて!
泣いている暇もなく次々と襲ってくる展開について行けない。
観終わった後ドキドキしたまま立てなくてしばらく体がこわばったままだった。



↓ここからネタバレあります。↓







どう解釈をつけるかその後4回観て夫の大切にしていた水晶が壊されて粉々になった時からそれは始まったのだと思う。
あの血で穴の開いた床もそれを暗示していた。
穏やかな二人だけの幸せな時をある電話が遮る。
夫が電話の相手が誰か分からないのに「待っているよ」と笑顔で話している。
背筋に何か冷たいものが走る。
まただ。
また始まったのでは?と観ている私の神経を逆なでする。
またあいつら夫婦を呼んだの?
私の想像が遠く及ばなかった事に気付いた時はそれは始まっていてもう手が付けられなかった。
ただのファンがサイン欲しさに集まって来たのではなくなっていく。
やがて戦時中の様な展開もありキリスト誕生の様な展開もあり残り30分位から始まる息もつかせぬ展開に惹きつけられ動けない。
ラストで水晶の由来が分かる。
ああ、これはエンドレスなんだなぁと。
また始まって振り向いた女の顔がジェニファーじゃなかった。
悪夢だ。
また悪夢が始まったんだ。

この悪夢、劇場で堪能したかった。
でも劇場で公開されないのも何となく観たら分かった。
だけどそこまでやるかって言う映画は上映されたりするのにこれを上映しないなんて日本て小さいな。
逆に上映しない事でハクが付いた感じがする。
たまたま横に座っていた娘も次第に敷き込まれた様子ででも最後には怒っていた。
なんでお母さん何回もこんなの観るの!と。笑
私はもう絶対に観ないから!と。
だって面白いじゃない。笑笑
やっぱり私変態なのなぁ。
最高に面白かったんだけど。(^^;;
娘曰く、私はドMらしい。
やっぱりドMなのかなぁ。


登場は少なかったけどエド・ハリスとミシェル・ファイファー演じた夫婦の残したインパクトは大きかった。
ダメと言われても平気で色々やるし完全に嫌いな人物を演じきっていてため息が出る。
流石としか言えない。

外人てホームパーティをよくやるでしょ?
呼ばれた人がまたその知り合いとかを呼ぶから結果的に誰かの知り合いって程度の他人までパーティに来るし空いた部屋ではやりまくるし自分の家でやれよって!
私は知人は家に招くより外で外食して会うのは多いけどこの他人も含めて家に招き入れるって行為の意味が分からない。
キッチンのそこには座らないでってとこに座るアホカップルのお陰で本当に壊れて水浸しになるシーンは「Get out!」と叫ぶジェニファーに言ってやれ!と観ていてスッキリした。
でもスッキリしたのも束の間また想像できない展開に持っていく監督、凄い脚本に震える!
これラジー賞取ったの?
何でよ〜!(ToT)
アカデミー賞脚本賞だよ、私には。

この最初の不条理に登場する兄弟の俳優は本当の兄弟だったんだ。
兄の方はあちこちで見た事ありましたが弟はよく知らなかったです。
顔もあんまり似てないし。
お父さんもそうだけど。笑

あの怪しい地下室がもっと関係あると思っていたけど悪魔が住んでいたとか自分の陳腐な予想を裏切ってくれた監督に拍手したい。
他にもあの事件の後一人で広い部屋に残されて夫の帰りを待つ妻の恐怖もともすれば普通の展開のサスペンス映画になりがちなのに観客の簡単な想像を裏切ってくれて本当にありがとう!
ハビエル・バルデムがいつもと違った怖い役でぴったり。
ジェニファーも強い女のイメージ付いていたから裏切ってくれてありがとうだった。
冒頭から噂のスケスケ衣装がめちゃくちゃ全裸よりセクシーなのでは?
なのにあまり官能シーンがないと言うのにもびっくり!
監督凄いわ!
色々裏切ってくれて凡人が思いつく不条理を超えた不条理に胸糞なんだけど引き込まれてまだTSUTAYAに返したくない!笑
やっぱりこれは買うしかないという。笑笑
アロノフスキー監督作品を全部観ている訳ではないけどこれが最高傑作なのではないかな。(断言早すぎる?)
「ブラックスワン」も私は結構好きだったのだけどそれを更に突き詰めたこの感じはもう最高だった。
ああ、もう何度観ただろう。
また長くなっちゃったけどもっと何かを書き忘れてる様な気がして観終わった後また観たくなってしまう麻薬の様な作品だった。
我こそは変態と豪語する人は必ず楽しめる筈。
これから皆さんのレビュー覗いてこよう。
変態はさて何人いるのかな?笑
panpie

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