oldmanSEヨK

マザー!のoldmanSEヨKのネタバレレビュー・内容・結末

マザー!(2017年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

凄かった!
とにかく想像力を掻き立てられまくりの2時間でした。

まるで、妻(ジェニファー・ローレンス)をゲームで操作しているような視点(リピートするのもゲーム的)。
その“妻”の目線で語られるストーリーは、当然、観ている方も彼女に感情移入せざるを得ない画面なのだけれど、その彼女もなんだか微妙に変?…と気づかされると、彼女の視点である目の前の映像の信頼性が揺らぎまくり、時間経過と共に、不安感の相乗効果が加速度的に増してゆく仕掛けは、見事としかいいようがなかったです。
(彼女の視線の外の使い方も上手かった)

今作に対して、監督やジェニファーはネタバレ発言をしてしまっていますが、それを読む前の鑑賞直後の、少しの間のファースト・インプレッションである推理&想像の方が、自分としては面白かったので書かせてください。

夫(ハビエル・バルデム)は“詩人”となっていますが、“詩人”=マスターという意味のカルト教団のカリスマ的教祖。

妻(ジェニファー・ローレンス)は、完全に洗脳された役目上の“妻”(の一人)。
彼女が時折口にする薬品はドラッグの一種で、服用すればするほど中毒は増し、副次的なものとして体内に蓄積されて結晶化され、癌細胞のように健康も損なってゆく。
(なんらかの儀式で役目を終える“妻”の内臓には、ドラッグが結晶化した巨大な石が出来、身体から取り出される予定)

訪問者はすべて狂信的な信者で、若くて美人というだけで“妻”という特別な地位を与えられている彼女に対しては、皆どこか歪んだ感情なしには見られず、彼女もドラッグの影響で、おそらく事実以上に信者たちの感情を過敏で被害妄想的に受け止め、教祖以外の人間に敵意を抱いてしまう。
つまり、我々はその彼女の感情のフィルターを通した映像(視点)で、常に観せられていることになっている。

外観は、ちょっと変わった造りの、のどかな一軒家。
でもあの原野一体の数十キロメートル四方はカルト教団の管理地であり、おそらく簡単には侵入出来ない施設。
終盤の爆発による地面の火花で、それなりの地下施設があることも判明する。
そこは、警察の突入も簡単には許さない程の複雑な構造であることが伺える。

教義には、カニバリズムも含まれており、監禁されている女性たちには、なんらかの基準もあったよう。
ちなみに“妻”は汚染されていたようだ。

“妻”を「インスピレーションちゃん」と呼んでいた、出版社(教団専用)担当女史は、警察の突入のきっかけとなったスパイ(おそらく無実の信者も含まれていたろう)を、処刑する役目を任されていた程、教団では幹部クラスの一人だった…

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少し残念に感じたのは、ラストでメタファーである“聖書”にこだわった(寄った)映像、《夫=神》にしてしまったことだと個人的に思う。

“夫”は、爆風で焼け死んだ方がよかったんじゃないかなぁ〜と。

新たな“妻”と同じく、教義を継ぐ新たな“夫”が、バルデムでない別の役者として出てきた方が、夫=教祖ですら代わりは存在する、という感じの結末として怖さが増したように感じました。

そういう意味では、ちょっと残念だけど、ホント傑作だと思います。
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