カルダモン

マザー!のカルダモンのレビュー・感想・評価

マザー!(2017年製作の映画)
4.6
動悸がとまらない。なんだこの破壊力。

昨年、劇場公開を待ち望んでいた作品で、公開中止になったと知りガッカリしていたのだが、まあ内容を見れば無理もなかった。倫理的に問題だらけで、常に神経を逆撫でされるような描写の数々は、精神衛生上たいへんよろしくない。
が、さらに問題なのはこの作品が映画として無類に面白いということ。奇怪な構造の家に次々と押し寄せる見知らぬ人々。
出口の見えない迷路のように、入り組んだ室内が不安や焦燥感に満ち溢れていく。これがすこぶる体に悪く、かつ釘付けに。
やり過ぎなほど明確な宗教批判で、終盤あまりのカオスぶりに脳がマヒしてきます。
エンドクレジットで初めて気づいたが、この映画には役名というものがない。意識しないレベルでの抽象化も、この映画の特殊性を際立たせているのかもしれない。
賛否はあれど、二度と忘れられないトラウマ映画なのは間違いない。ここ数年で3本の指に入る強烈さ。地獄のような円環構造に目眩。

"満たされることはないから創造する。それが私なのだ"
"もう死なせて"
残念ながら人間が生きる限り同じ過ちは繰り返される。どうすればこの地獄を肯定できるだろう