Shelby

マザー!のShelbyのレビュー・感想・評価

マザー!(2017年製作の映画)
3.6
とんでもない問題作。全てがぶっ飛び、常識なんてまるで通用しないくらい歪で悪夢のようなストーリー。異常なのだ。見ている此方が何が起きているか分からずに困惑してしまうほどの破壊力を持つ映像の数々。

今作を見る人に伝えたいのは、目に見える情報だけで物語を判断するのではなく、全てがメタファーになっていることを頭に入れてもらいたい。
最初こそ、どこにでもいる夫婦生活を映し出していた筈なのに、どこからかズレが生じ、非現実的で無秩序、混沌とした世界へと変化していく。これは何の映画?パッケージの美しいジェニファーローレンスはどこへ?そんな感想を抱くだろうが、鑑賞し終わってから色んなサイトで監督の伝えたかったことを知ると尚作品を楽しめる。
決して受け身の姿勢だけでは作品を理解できないのがこの映画のキモなのだ。

本作はキリスト教の聖書をベースにした宗教暗喩の寓話である。夫が神であり、妻が地球。何度でも再生し、創り直す。そんな破壊と創造の話であるとのこと。
そして監督が最も伝えたかった地球の環境問題提起。問題視されている地球温暖化。
いかにして自らのことと捉えるかを、中心とした監督からのメッセージ性が強い作品だったのだ。

正直、常人がこれを1度見ただけでは監督が伝えたい核心までは行き着かないであろう。察しの良くない私にとって理解するのにだいぶ時間がかかってしまった。
だが、まとめサイトに記載のあった
「地球温暖化における問題を考えるより、カーペットが火事で焼けてしまうことの方がより身近に置き換えることができるだろう」という言葉。
この一文がやけに胸に突き刺さった。

日本で公開中止になったのも、充分理解出来る。監督自らが語る、幾つかの判断材料を提示しているので熱く議論してもらいたいというコメント。確かにこれは物議を醸す作品である為自然と鑑賞した人と語りたい気持ちにさせられる。監督の思惑通りに見事心動かされてしまった。
Shelby

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