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マザー!のpikaのネタバレレビュー・内容・結末

マザー!(2017年製作の映画)
2.0

このレビューはネタバレを含みます

なんだこれ!ギャグ映画じゃん!笑 コメディでもシュールレアリズムでもなくギャグ!
その点で言うと結構笑えたし、途中何度か「もういいや」と諦めかけたけど問題作だけあって最後まで見れるくらいの妙なパワーはあった。
警告してもらったのに見た私が悪いのであんまり文句は言わないでおきたいが。

ポランスキーは全然見てないのでわからないけどブニュエルやってるのはわかった。「皆殺しの天使」の不条理さと観客との価値観の齟齬や距離感、「ビリディアナ」のまんまな狂宴、「ナサリン」なんかのキリスト教に対するアプローチとか「銀河」の聖書ギャグかなと。
後半の最も胸糞なところは「ベイビーオブマコン」以来の反吐の出るシーンだったし、「コックと泥棒〜」なディナータイムも挿入されていて、グリーナウェイから品格と美学と魅力と奥深さを引っこ抜いて不快感だけ抽出した胸糞シーンになってる。

ジェニファーローレンスが、可哀想一辺倒じゃなく彼女に対してもイライラさせられるのは面白いが、ジェニファーローレンスの一人称視点なのにそう思わせてしまうせいで没入感が薄れ、他人事になってしまう。それなのにカメラは延々とジェニファーローレンスばかりを映しているので違和感が生まれて観客との距離が離れる。演技は良いけど画的には飽きる(^o^;
不条理と観客の間にジェニファーローレンスの反応があることでわかりやすい親切設計になっている分、野暮ったさがあり、そこが好みの分かれ道というか、その部分を魅力と捉えるかダメだと捉えるかなんだろうけど、個人的にはその点がシュールレアリズムというよりギャグになってしまっている要因だった。

後半の人類史の凝縮みたいな、悪の濃縮みたいなカオスのところは面白かったけど、平行して陣痛が起きてるから何を見せたいのかっていう軸がとっ散らかっている印象。
私的な解釈だけど、バルデム=監督として家族に対して「ごめんね、でもわかってるからこんなふうに映画にしたのでわかっておくれ」みたいな言い訳めいた贖罪な面も感じられていて、それはいいんだけど、それとキリスト教の暗喩とか性悪的な人間の面が同時に絡まっているってところが、両方描きたい!っつー欲張りな印象が。
不快な胸糞なところもやるのならばもっと丹念にジックリと、精神をもっと抉るよう方が好みなのもあって観客の目を気にしているスピード感が残念。股間はまだしもグロのモザイクはレイティング気にしてモザイクかけるくらいなら安っぽくても見せて欲しかった。カニバルシーンはスローもしくはアップで見せる方がより一層くるものがある。

芸達者な名優たちの演技は隅々圧巻。ジェニファーローレンスは最高に素晴らしいし、ハビエルもさすが。脇役たちも名優ばかり。作品の質にかなり影響している。
フィルモグラフィー的に、ここでこういうギャグチャレンジしてみたくなるのは納得。
ただ不条理を描くにしてもテーマがあれこれとっ散らかり過ぎていて単なる要素でしかなくなっているところが物足りないし、上記で色々文句を言ったように狂気にも振り切れずギャグにしかなってないところが非常に中途半端。
逆にその軽さとごった煮感がB級的な魅力になってるという切り口ならアリ。
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