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マザー!の2MOのレビュー・感想・評価

マザー!(2017年製作の映画)
4.3
ノアの方舟を描いた前作に続いて、“楽園”、“黙示録”と口にされれば聖書をモチーフとした箱庭表現であろうことくらい察しはつくが、その定型には愚かな人間への愛憎を軸に、様々なメタファーを入れ替えることも可能である。

神経症的な、ポランスキー的な悪夢から一転、怒涛の大混乱に陥るほどに嫌悪感とあわせて名状しがたい共感を覚えるのは、視覚を通して触感が伝わる芸術然とした映画表現に塗り込められた現代社会の縮図と病理のせいであろう。

悲劇的な時代に芸術は栄える。混沌の世こそ創造の“母”であり、彼女ら彼ら大衆の元へ芸術は贈り還される永久機関。
その傍に、芸術家という“創造主”の倒錯した自己愛に晒されて捨てられる、もう一つの母なる存在を犠牲にしながら。

得てして、ミソジニーなる批判が渦巻く作品では、その表層的な暴力表現の皮一枚めくった裏側で、父権社会に安住する自己欺瞞や、女性性への劣等感、文字通りのマザーコンプレックスを自覚的に暴露していることが少なくないように思う。
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