よし

マザー!のよしのレビュー・感想・評価

マザー!(2017年製作の映画)
5.0
一年近く前に薦められて(薦められてはない。むしろ警告に近いトーンだった)ずっと心の片隅にひっそりしてた映画を観た。とんでもない映画だった。稚拙になることを承知で書く。

薄いメイクだとほんのり黒木華っぽいつるんとした顔の綺麗な奥さん。素敵な人だった。すーっごい演技。なんだろう。奥さんの後ろをぴったり付いていくみたいなカメラワークもなんだろう。

今村夏子の『あひる』みたいなそわそわ感と気持ちわるさが続いてまじ無理...となりながら観ていたけれど、途中で確実に何かのラインを越えた。そっからは気持ちわるさの質も変わっていったように思う。わからんけど原罪とかなんかそんな方向に。
終始、一軒の家が舞台であり続けながら、スケールは家の中には収まらない。とんでもなく大きなものの比喩になっていると気づき、それがいったい何のことなのかはっきり解ったような気になったのは旦那さんが「分かち合おう」と言ったとき。だと思う。

そっち方向には全く造詣が深くない。だから解らない。僕には解らないいろいろなメタファーがあったのだろう。だけど、これは人の歴史だ。創世記だ。愚かという言葉がとても悲しい。どこかの神が言った神聖な言葉はこういう意味だったのだろうか。

こういう映画を観たときに、あらゆることに精通せず知らないことばっかりな自分のちっぽけさがつまらなくなる。人生をさぼってきた気にすらなる。というようなことは後からどんどん浮かんでくるいわば濁りで、観た直後はどうしたらいいのかわからないドキドキが続いたのだった。まだ鎮まらない。
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