すぅ死ぬまでに観たい1001

マザー!のすぅ死ぬまでに観たい1001のレビュー・感想・評価

マザー!(2017年製作の映画)
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流石、日本での公開が中止された問題作なだけあって、アルノフスキー監督作の中で最も作家性が色濃いのではないか。
この監督の真骨頂は「痛み」の表現力にあると思う。『レスラー』においても『ブラックスワン』においても競技の孕む痛みや日常における些細な痛みの表現力がずば抜けており、見てて「やだなぁ」と思ってしまう。その「やださ」加減が今回は精神に攻撃してきた。
そもそも他人を家に入れることに抵抗がある人なら強烈に拒否反応を起こす前半の展開、そして「マザー」となってからの現実と虚構の境界線が曖昧となる後半の展開。どのシーンにも見るのがつらく些細だが確実な不快感があった。
『反撥』『イレイザーヘッド』『ファニーゲーム』など多くの類似作が挙げられているが、個人的に連想したのは今敏作品だ。
ダーレンアルノフスキーは日本の映画が好きなのかな?『π』では『鉄男』を『レクエイムフォードリーム』『ブラックスワン』では『パーフェクトブルー』を連想させる。
テーマとしては「母となる話」そして「キリスト教的な話」なのだとは思うが、個人的には移民問題と重ね合わせてしまった。内へ招き入れる者とそれに戸惑い振り回される者。悪気のない外の者の振る舞いで壊れていく家や人間関係。移民受け入れ政策による欧州の混乱が起こる現代性を反映していてもおかしくはないのでは。