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ハウス・ジャック・ビルトのkanaco4月末までお休み中のレビュー・感想・評価

ハウス・ジャック・ビルト(2018年製作の映画)
1.9
強迫性障害を持ち建築技師を自称する男が連続殺人鬼として目覚め、殺人を哲学や思想、そして芸術と絡めて論じ自身を正当化していく話。殺人行為そのものの非道さや悪趣味さはトップクラス。この映画を「ブラックジョーク」ととるか「酷く不謹慎な作品」ととるか。率直に言って私は後者、好きではない🙇‍♀️(140文字)

****以下ネタバレあり&乱雑文****

★非常に辛口につき、本作品及び監督を愛する方ご注意ください。



カンヌ国際映画祭にて途中退出者が続出するも、上映終了後はスタンディングオベーションが鳴りやまなかった衝撃作として、公開した頃はかなり話題になったマーダー映画。「無差別に殺人を行い、死体をアートのように見立てるサイコパス」みたいな印象を持っていたので、てっきりPS3のFPSゲーム「BIOSHOCK」の変態芸術家サンダー・コーエン先生🎨みたいな感じかと思ったら、そういうわけではなかった😂(ところどころ同じことはしているけど)。

強迫性障害を持ち、建築家になることを夢見て建築技師を自称する男ジャックが、ある日に女を殺害したことをきっかけに、殺人に夢中になっていくという話。映画ジャンルとしては、確かにアート系だとは思った。でも刺さる人には刺さるのかもしれないが、私としては特に魅力が感じられない作品だった。ほぼ、主人公のワンマンショーなので、この殺人鬼の思考・表現方法に対してどう感じるかで評価が変わってくるのではないか。

ペラペラとよくしゃべる殺人鬼(対話と思わせつつ、独白みたいな映画だからそれは当たりまえ)なのだが、自分の行為について、哲学や思想そして芸術と絡めて論じ、教養豊かな知識人のような弁舌を振るうのだが、そういう深い人間にみせかけて、改めて反芻したら「全然そうでもなくない?」みたいな薄さを感じてしまう男だった。ただ単に人間狩りが好きで、小さい頃からのそういう性癖だったという所を、自分の中でグダグダ理由をつけて正当化している自己陶酔型にしか見えず😕

映画を鑑賞している最中は、自分とは違うジャンルに極まったオタクのまくし立てる早口の布教を聞いている気分。あるいは、自己陶酔型の一見知識人のような長文の連投ツイートを読んでいる時の気分。私にとっては、悪趣味や残酷性への嫌悪を翻してしまうような「悪の魅力」を感じる主人公では決してなかった。

この監督の作品を複数鑑賞し、その特性をよく理解し愛する人たちや、映画に出てくる哲学思想をもっと考察できる人などは、違う見方ができるのかもしれない。ダンテの神曲が必須なのは中々ハードルが高い(私だけ?)。うーん、社会風刺系…的なニュアンスもあった気がするが、そこも私の教養が足りないわ😵

あとは、この作品をみて「笑える」かどうか。嫌な映画としか思っていなかったが、エンディング曲でやっと本作はコメディだったのだと腑に落ちた。映画の中であればどんな不謹慎で残酷なことをしても良いという極まったブラックジョーク。最近でいうと、アリ・アスター監督のミッドサマーと同じ部類(私の中では)。だから、この作品で全てを混ぜっ返して「笑う」ことができる人は楽しめるのでは。

正直、グロテスクさは、他のゴアやスプラッターをウリにする作品に比べたら、まだ控えめ(それでもしっかりと見せるので、苦手な人には相当厳しいだろうが)。しかし行為そのものの、非道さ、おぞましさや悪趣味さはトップクラスなのではと思う。

なんにせよ、やはり鑑賞する際は、ちょっとリサーチして得意なジャンルであるか注意してから見たら良いのではないかと思う。

いやぁ~ドラクロワ大先生もビックリしちゃうよ😂