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ハウス・ジャック・ビルトの1303のレビュー・感想・評価

ハウス・ジャック・ビルト(2018年製作の映画)
4.5
劇中に於ける猟奇表現は生理的・道徳的嫌悪感を掻き立てるのに充分な内容ですが所々微量な観客への共感要素が仕込まれており糾弾されるべき不条理の象徴である筈の彼に私達自身がいつの間にか成り代ってしまうという仕組みが巧みです。
善意を無礼で返された際に沸く怒りや悪意に晒された隣人への無関心に対する揶揄、遂に彼が作り上げた家の美麗さに感じる恍惚 .. など自己を維持する為に残虐な行為に及ぶ彼と共鳴・同期を感じる度に社会/反社会を隔てる境界線の曖昧さにくらくらします。
悲劇と喜劇は表裏一体とはよく言われる事ですが彼が自前の潔癖や脅迫障害、完璧主義な一面を覗かせる度零れるノワールコメディとしての上品な悪趣味さも今作の白眉と言えるのではないでしょうか。
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