JoeyOgawa

ハウス・ジャック・ビルトのJoeyOgawaのレビュー・感想・評価

ハウス・ジャック・ビルト(2018年製作の映画)
5.0
前作『ニンフォマニアック』から5年ぶりのラース・フォン・トリアー監督・脚本最新作『ハウス・ジャック・ビルト』。

最高。
これぞ映画!
これぞ映画の芸術!
何度でも観れる!
何度でも観るために作った本物の映画!

ミヒャエル・ハネケの『ファニー・ゲーム』やキム・ギドクの『メビウス』などが三度の飯より好きな人のための映画だから、これらがだめな人はおとなしく『アラジン』でも見てた方がいいよ(笑)。

とにかく躊躇がない殺人絵巻!

殺人者目線で殺人者の気持ちに近づけるラースのデビュー作『エレメント・オブ・クライム』の応用なんだよね、これ。

これラストシーンの解釈を含めてラース・フォン・トリアーによる21世紀の『殺人狂時代』ですよ。

あと主人公が老人に過去を独白する形で展開したり、数々の音楽、絵画、建築、文学、動物などのトリビアコラージュなど、
作りが『ニンフォマニアック』と同じなんだよね。

それとなによりも重要なのがグレン・グールドのピアノ!!しかも、なぜかグレン・グールド本人映像つき! これがより不気味で凄い。
密かに何百回見ていた予告編のを聴くのとは違い、本編のグレン・グールドには重みと不気味さがある。



とにかく、展開の設計がしっかりしている。

「第1の出来事」はシリアルキラーになるきっかけとしてのホップ、
「第2の出来事」はより本格的なシリアルキラーになるための“発展”のステップ、
「第3の出来事」はよりしっかりとした残忍さを見せる完成形のジャンプ、
「第4の出来事」と「第5の出来事」はさらにオープンリーチのような大胆不敵なジャンプの熟成、
「エピローグ」はそれまでの章とは完全に別物の地獄編の着地、と完璧としかいいようがない。


今回の作品は展開と演出は前作『ニンフォマニアック』に似ているが、セルフ・オマージュが多かった前作に比べ、本作はセルフ・オマージュは少ない。そうした意味で、これまでのラースの集大成だった前作『ニンフォマニアック』よりも遥かに先を行き、真の意味でのラース・フォン・トリアーにとっての新作と言えよう。


パンフレットを見るとプロダクションノートに色々とヒントがある中で、ラースは基本的に最近の映画を見ていないらしい(ただし、キャストイメージはキャストが出演した過去作品からの影響はある)。むしろ、デンマークの大先輩カール・ドライヤーやアルフレッド・ヒッチコックの影響下で塗り固めながらも決してありふれていない、ラース独特の作品に仕上がっている。マット・ディロンが演じるジャックが『サイコ』のノーマン・ベイツっぽいだけでなく、『ロープ』や『ハリーの災難』の死体隠し、第1と第4の被害者が金髪の美女、『裏窓』風の建物のカットなど、ヒッチコックらしさがいくつか見られる。これまで、いままでのラースの作品ではドライヤーの影響はいくつかあったが見えにくかった(あったかもしれない)ヒッチコックの影響がくっきりと感じられる。



#ハウスジャックビルト #ラースフォントリアー #R18🔞 #BRAVO👍
JoeyOgawa

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