ごろう

ハウス・ジャック・ビルトのごろうのレビュー・感想・評価

ハウス・ジャック・ビルト(2018年製作の映画)
4.5
振り返ってこちらを見つめる幼少のジャックが、カメラレンズのごとき無機質なその目で眼差しているのは草刈りの様子であると同時にスクリーンの前にいる我々観客であり、我々の中に原風景を見る目を我々は見るという映像構造によって、ERの反転した白と黒のようにはっきりとではないけれど、ジャックの目を通してネガの世界=遠い過去となった世界の背景を朧げに意識させられるようで、この映画の詩情の正体は結局忘れ去られたものへの郷愁なのではないかと考えれば、死体の冷凍保存として象徴的に表現される腐敗の美、死んだものを留め置くこと、またはカメラがまさにそう言われるように、対象を殺して留め置くことで生まれる美、すなわちアウラとしての芸術への拘泥が理解されるのである。同一性の再獲得への執着。この映画に対する意見の多くが監督の人格に触れていることにもわかるように、この映画の作家性は監督の自己への異常な関心によって生まれているのは間違いない。ところで監督は大学時代に見ていた映画より以降の新たな映画を見ていないらしい。
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