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ハウス・ジャック・ビルトのRのレビュー・感想・評価

ハウス・ジャック・ビルト(2018年製作の映画)
4.5
大好きな大好きな監督ラースフォントリアーの新作ということで、期待大で見たら、毎度のごとく、ちゃんと期待に答えてくれる大変に面白い映画だった! 自分の芸術のために60以上の人を殺害した、恐ろしい連続殺人鬼ジャックが、彼をどこかに案内しているらしい老人に、連続殺人の内容を詳細に語る全4章とエピローグ、という形式で話が進んでいく。第1章は、いかにして建築家のジャックがシリアルキラーのキャリアを始めたかが描いてあって、そのきっかけがボクの大好きなユマサーマンというのが素晴らしい。本作のユマサーマンは人をなめきった最高の性悪ビッチをノリノリで演じてて、すばらしい!!! と思ってたらゴン!ゴン!と素晴らしい殺され方をします。素晴らしさの嵐。この時点でメロメロ。第二章は、ジャックが強迫性障害であるため、殺人現場を死ぬほどキレイにしとかないと気が済まないようすがコミカルに描かれ、また、冷凍用のだだっ広い倉庫に死体を次々とコレクションし始める様子も描かれる。彼は殺した人たちをアーティスティックに保存し、アーティスティックな写真を撮って、アートだと楽しんでいる。次の章では、3人の男女を最も残酷な順番で殺したり、その次は、冒瀆的と言うべき人体への嗜虐性と使用法を見せたり、と、面白いシーンが続くのだけど、残虐シーンがトリアー氏にしては意外とおとなしく、結構誰でも見やすいと思われます。ディレクターズカット版ではもっと激しいのでしょうか。激しいの見たいっす。で、それらの惨殺の間間に、ジャックが建築家として湖畔に家を建てるイメージが隠喩的に挿入されつつ、しばしばジャックと老人の対話がナレーションとして聞こえてきてる。だんだんと、あれ? この殺人鬼、ひょっとしてトリアー監督の思想そのもの?と思わせる自己内省シーンが出てきて、マジか、ホンマに? ホンマですか? と思って、いろいろ調べると、どうやら本当らしい笑 面白い監督ですねー。こんなに堂々とヒトラー崇拝を公言してる文化人てなかなかおらんよね。やっぱ好きやわートリアー。あ、もちろんボクにはそういう思想はありませんがね。ものすごい偏り方してる人がボクは結構好きなので。ほんで、一体全体このシリアルキラーのオムニバス的回想録が、どういう形でまとまっていくのだろう、と思ってると、何と! THE HOUSE THAT JACK BUILT! からの、昔々読んで凄まじい衝撃を受けた、ダンテの神曲に到ります。何という跳躍。ってか堕落。そして、それまでのすべてに!!! そういうことだったのかーーーーーーー!!! ってなります! おもしろい!!! おもしろすぎる!!! 何たるユニークさ!!! 唯一無二!!! そして、高度に象徴的なエンディングの意味を考えると、なんとも言えない気持ちになりますね。てな感じでとにかくストーリーの展開が最高、それ以外で書き留めておきたいのは、やっぱこの監督の提示する映像の魅力。どのカメラマンと仕事をしてもトリアーのヴィジョンがハッキリ出てて、個人的には今のマヌエルアルベルトクラロは、トリアーのテイストにピッタリ。ドライで即物的で不気味なくらい低温度、この世界で生きることに、物理的存在として以上の意味なんてないんだよ、って雰囲気が漂いまくってる。だからこそ最後の展開はなおさらビックリ。めちゃくちゃ人間臭いわ。あと、主演のマットディロン。昔はカッコいいイケメン兄ちゃんって感じやったのに、サイコパスが似合いすぎなヴィジュアルになってるやん!!! 演技も完璧やし! すごいっす! 100年の恋も冷めるでしょう! 音楽的にはボーイのFameが印象的! 笑ってもーたのが、殺害されたほとんどの被害者に共通したある特徴。トリアーさんたら、もう! ちなみに、えっ!って声出てまうくらい酷い動物虐待シーンもありますので、どうしても苦手な人は見ない方がよいかと思われます、それで見ないのは勿体ないとも思うけど。もひとつちなみに、おそらくトリアー監督の作品をたくさん見てれば見てるほど、本作の納得が深まります。まだ2作くらい見てないのがあるのでまた見たいなー。見直したいのもたくさんあるなー。本作もまたゆっくり見たい。もっかい見たらもっとスコア上がるかも!
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