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ハウス・ジャック・ビルトのdeenityのレビュー・感想・評価

ハウス・ジャック・ビルト(2018年製作の映画)
3.5
いやー、ラース・フォン・トリアーは大好きな監督なので劇場で見たかったんですけどね。結局今更DVDにて鑑賞しました。
まあトリアー大好きって言ってる時点でちょっとやばい感じはありますけど、この作品はまたトリアーの中でも一際やばいですね。12年にも渡るシリアルキラー、ジャックの心理描写とかその過程を映した作品。

まあジャックは自分は建築家だとか何とか言って家を建てる過程をちょいちょい見せられるんですけど、そんなことより5章に渡る殺人がエグい。
カンヌで退出者続出とか気分悪くなるなんてのもあながち間違いないなと思わせるほど、はっきりとそのシーンをとらえています。

ただ、そのシーン自体のグロさよりも、その表現の仕方がきついですね。鹿狩りのくだりとかまじでやめてほしいレベル。何故そこで好きな数字聞いたの?って思ったら、おいマジか。。だもんな。
まあ見ていてしんどい映画であることは否定はしません。

尚且つやばいのは、この映画をコメディとしても捉えさせようとしているところですね。強迫性障害のくだりとかはちょっと面白くはあるんですけど、まあ笑えないですよ。笑えないですけどそういう表現にしたいのはわかりますし、そもそも全体を通してこの作品をコメディテイストに仕上げる意図がどうかしてるわ!とツッコミを入れたくなるレベル。
不謹慎過ぎて笑っていいのはラストのエンドロールの曲だけでしょうね笑あんな小銭入れとか笑わせれると思っとんのかい笑

でもね、この作品の本当にやばいのって『ジョーカー』的なヤバさを秘めてるところだと思ったんですよね。

第1章で車の故障が原因で図々しく無神経な女が関わってくるわけですが、どう考えても腹が立つような態度とか会話を繰り広げてくるわけです。だからその女がいとも簡単に殺される様は酷いけど仕方ないとも思えてしまいます。
まあその後、ジャックのさすがの行動に引く一方なんですが、最後の第5章で人間を一発の銃弾で何人殺せるかって実験に取りかかりますよね。初めてここで彼の殺戮ショーがもたつく事態が起こります。同時に警察にも追われ、時間的な焦りも生まれる中、見たくないはずなのに心のどこかでその引き金が引かれないことにもどかしさを感じている自分もいたんですよね。

いや、それって自分の発想がやばいのかもしれないですけど、こういう順序で見せてきていることとかはトリアーの意図でしょうし、初めの殺しはやむを得ないとか最後の銃弾を待っているのとか、さながらみんなの心にもアーサーがジョーカーになるような、本作ではジャックみたいな心を持ち合わせているのだと突きつけられているような、そういうやばさを感じました。

まあ念願の材料にもこだわった家とか、さも理屈っぽく発想を解説するのとか、アート的な部分とか、理解できない部分も多々あります。
だけどこの危険だけど深みのある感じはさすがだなと思いますし、やっぱり私は今後もトリアー作品が見たいなと思います。
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