グラッデン

50年後のボクたちはのグラッデンのレビュー・感想・評価

50年後のボクたちは(2016年製作の映画)
3.8
最近、日本では少し見られなくなった、何かに抵抗する少年たちの夏の思い出を描いたロードムービー。「ロードムービー」と言う表現自体も久々に目にしたような気もします。

テクノロジーの発展は人と人を繋ぐハードルを低くし、自らが欲する情報は画面上から見聞きすることができる。そのように考えると、旅を駆り立てるものは何かと言えば「冒険心」なのだと本作の鑑賞を進める中で確信しました。だからこそ、旅の冒頭でスマホを車から放り投げて破壊したのは正解だと思いました(笑)

印象に残ったのは、クラスの輪から見事に外れた変人と転校生の2人が、曖昧な目的で旅を続けていく中で、徐々に目的地に向かうことよりも「どこまで旅を続けることができるのか」というマインドに変化していたことです。
裕福ではあるが友達がいない主人公は、はみ出し者の転校生と道中で苦楽を共にすることで(ゲイではないと否定しながら笑)友情に芽生え、様々な人との出会いから成長の糧を得ていきます。
もしかしたら、旅そのものから学んだことは何もなかったかもしれませんが、学校や家族といっま自身を縛る枠組みから大きく外れることが自身の存在を大きく変えたことを証明しています。

彼等の雑な運転とは対照的に、青春作品の王道を真っ直ぐと行く物語であり、その物語の終結に見たのは人間の成熟なのではないかと感じました。わが国の青春映画に足りないのは、枠の中に入れていない「俺たち」と「冒険心」なのかもしれない。終息したはずの中二病を刺激する14歳の衝動が微笑ましくも眩しい作品でした。