きえ

50年後のボクたちはのきえのレビュー・感想・評価

50年後のボクたちは(2016年製作の映画)
3.8
この作品は2016年9月10日公開のミッシェル・ゴンドリー監督『グッバイ、サマー』に限りなく近い。14才の夏休み、クラスのはみ出し者と、同じくはみ出し者の転校生が車でプチ逃避行…。

似て非なるこの作品には原作がある。48才の若さで亡くなったドイツの作家ヴォルフガング・ヘルンドルフ著『14歳、ぼくらの疾走』。ドイツで大ベストセラーとなり世界26カ国で翻訳化されてるとか。

『グッバイ…』と『50年後…』の最大の違いは手作りの車か盗んだ車かの違い。余談だけど『盗んだ〜』って言うと『バイクで走り出す♬』と必ず言いたくなる。笑。こっちは14の夏ではなくて15の夜でしたね。好きだなこの曲 🎧♬♪

話脱線! ^^;

で、私はどっちが好きかと言うとミッシェル・ゴンドリー監督には申し訳ないけど『50年後…』の方が好き。疾走感の違いがやっぱり1番大きいけど、キャラの魅力だったり、行く先々で出会う人達とのエピソードだったりがテンポ良く盛り込まれている。

特に、見るからにはみ出し者の転校生を演じたアジア系ニューヒーロー=アナンド・バトビレグ・チョローンバータル君のキャラ立ちが効いてる。モンゴル系の風貌に独特のヘアースタイルでツッパリ風ながらもどこか愛くるしいチック。彼がどんな家庭に育ちどんな家族がいるのかその背景は描かれない。とにかく媚びない動じないマイウェイタイプ。

一方、母親はアル中、父親は若い姉ちゃんと不倫中と言う殺伐とした家庭に暮らすマイクはクラスでも変人扱いされ、今ひとつ自分と言うものに自信を持てない少年。

そんな2人が自分達だけクラスのマドンナの主催するパーティに呼ばれてない事がキッカケで急接近する。閉塞感漂う日々の中に突然新しい風が吹き込んで”抜けてく感じ”ってあるよね。

しかもそれが異文化コミュニケーション的に全く違うキャラ同士だったりすると化学反応まで起こしてレボリューションに近い変化を齎す。そうこの物語はまさに『マイ・レボリューション』🎧♬♪〜

音楽の話で言えば、広大な田園風景を何とリチャード・クレイダーマンの名曲『渚のアデリーヌ』🎹🎶と共に疾走して行く少年達。疾走感とゆったり美しいメロディ、14才と往年の名曲、この対比が見事にハマっててまさに美しき疾走なのだ!

ミステリーサークルよろしく車でトウモロコシ畑⁇をなぎ倒し自分の名前を一文字描きするなんてやってみたいぞ!と見てるこっちまで気持ちがはしゃいじゃう青春きらきら感ったらない✨

そんな中でこの作品はチックとマイクとのマンツーな出会いだけでなく、様々な出会いの大切さが描かれる。人はそれぞれ何かを抱えて生きている。そう知る事から自分の世界は広がってまるで脱皮する様に殻が破られるんじゃないだろうか。

こう言う作品を見ていると男の子がほんと羨ましい。無鉄砲な中に人生の沢山の学びがあって、それは決して教科書や参考書と睨めっこしてても学べない。だから好奇心や冒険心をしっかり消化して大人になるのが理想だと思う。

思春期映画にしては珍しく下ネタ満載って言うダイレクトさはなく、父親の不倫に見る大人の事情ってやつや、逃避行中に出会う女の子との淡い関わりの中に少年期の性への目覚めが描かれている。

そして思春期最大の課題である自分への自信。それは何かに優れているから生まれるものではなく、自分は自分でいいんだと言う揺るぎない肯定感によって齎されるもの。マイクはチックとの冒険逃避行の中で肯定感を手にした。勇気を手にした。打開出来ずにいた殻を破る事が出来た。

出会いが人を変える。若しくは出会いの相乗効果ってあると思う。今日の自分が未来を作り、心輝いた日の共有と共感がきっと未来の糧になるだろう。『50年後のボクたちへ』大好きなタイトルだ。

夏休みは少年を1つ大人にする。
素敵な思春期映画また1つ…