マクガフィン

いぬむこいりのマクガフィンのレビュー・感想・評価

いぬむこいり(2016年製作の映画)
3.4
神からの啓示を受け、自分にとっての宝物を探す女性の姿を追う、全4章構成で4時間超えの物語。

ダメ女教師の主人公(有森也実)が神のお告げで仕事を辞めて、自分探しの旅をするために南の島へ行くプロットは、シニカルな風刺やコミカルとエロスが入り乱れる現代的絵巻物で、アートに特化しなく、人間味や人間模様をカオスに描写した世界感に好感。

低予算でチープな演出や造形と作風のコミカルさが意外と調和しており、煩悶と挫折を繰り返しながらも進んでいく。特に2章終盤からのロケーションの背景の凄さに感心させられる。

1章の東京での日常を捨てて猪突猛進する展開は短くてよく、非日常が訪れる前触れに。2章の島の選挙闘争が冗長に思えていたが、後に監督の描こうとする世界が理解し、その長さに納得する。
3章の無人島で緻密に考え抜かれた自然のロケーションを背景に身も心も解放されて直情径行していく模様に作品の熱量が上昇し、4章のイモレ島の戦争でこれまでの虚構と神話が集約する。
大きく分けると前半(1・2章)と後半(3・4章)に分けられるが、1章と3章、2章と4章が対にもなる構成に。

作品を通して生物にとって、食・愛・性交は繋がれているように思え、更に支配することと支配されることの権力構造の闘争が殺すことも含めて繋がっていくことを次第に焙り出していくプロットに唸らされる。

終盤のシーンは冒頭のシーンとリンクして、悪人を嗅ぎ分ける嗅覚の能力が伏線となると思いきや、全く予想外の展開になり理解不能に。

最後や所々で理解できなかったが、監督や役者の熱量が伝わる心地よさと、人間の本能や関係性や関連性を描写したことに考えさせられる。

実写映画が蔓延する映画界での、監督の果敢なチャレンジ精神を賛えたい。