まりぃくりすてぃ

いぬむこいりのまりぃくりすてぃのレビュー・感想・評価

いぬむこいり(2016年製作の映画)
2.0
よほど暇な人以外はこれ観るべきじゃない。
アテ書き作品としては成功してる方。「監督が有森也実さんに演じさせたかったもの」と「有森さんが演じたかったもの」と「観客が有森さんに期待してたもの」がほぼ一致だから。
彼女自身が推してる第3章が良。キャラ的にも性的にもやっと弾けて映像美も高まって。でも、それ以外の章(1・2・4)は要らなくない?
つまんないんだもん! 脚本書いた人の、いわゆる初期衝動がたぶん小粒で低級(反知性的)だからね。そのわりに、匠気(大作みたいなもので驚かそうっていう野心)プンプン。
これは褒めになる? 途中で私アクビ一回も出なかった。怒りも呆れもせず最後まで観れたよ。選挙ネタや内戦ネタに洞察を織り交ぜていくために必要な知性愛(例えばリベラリズムのようなもの)がそもそも希薄なぶん、ストーリーはわかりやすいんだ。

有森さんと準主役の武藤昭平さん以外の俳優は、意欲的じゃなかったっぽい。柄本明さんは不機嫌顔つくるばかりの省力演技だし、緑魔子さんはもろに体力落ちてる感じ。眼帯の女子は若いくせに蹴りや銃構えのスピードがなさすぎた。
そんななのに、全員もれなく(片嶋監督をきっと筆頭に)「いいのを作り上げたぞ~~」の達成感で画面満たしてる感強いんですけど(笑)。
監督と有森さんの二人にチョイまじめに訊きたい。「こんなのがもしも人生最後の映画だったら、納得・満足・自画自賛できる?」


ところで、邦画の最高傑作『パイパティローマ』(1994年 中江裕司監督・プリンセスプリンセスの今野登茂子さん主演)の悪いパロディーが本作だ。「自分を捨てた男を捜し回る」が「理念の上での宝探し」に変わった。テーマごと漠然化?
類似点は───
❶オーラもバストもないもののまあまあ美人な方である女優を“冴えなさを持ったヒロイン”として起用
❷南国に“固有の目的”に導かれて乗り込んでゆく彼女が島から島へと移りつつ、いろんなモノゴト(特に男たち)に翻弄されるも(エッチなチョッカイ受けをふくめて)体当たり的にガンバりつづける
❸丼の麺をすする正面バストショット長め
❹お面かぶった男の過度な勇躍
❺三角関係で女二人の掴み合い喧嘩
❻ピストル
❼島の子供たちとの交流
❽島の巫女的な人との遭遇

それと、同じ沖縄映画『ウンタマギルー』(1989年 高嶺剛監督)のテイストも。
❶異種間セックス
❷ハダカ
❸ゲリラ戦。撃ち合い

こんなふうにさんざん沖縄を意識してるくせに、、、、沖縄じゃなく鹿児島県内を低俗劇の主舞台にすることで、沖縄県が日米両政府によって持たされてる不幸な“今日性”からこの映画は目を逸らしきってる。
まったくもって今の日本人に必要なストーリーのわけない『いぬむこいり』は、90年代的発想が主のようだからかスマホとかは全然出てこない。「イモレ島」について知りたかったらまずネット検索しろよ~とツッコミたかった前半、2章になっても3章に入っても「え、まだイモレ島に着いてないの?」とたかがイモレで引っぱることへの疑義あった。

むりやりまとめれば、“有森さんを嫌いにはならない映画”と言ってあげられるだけかな、やっぱり。