dm10forever

最低。のdm10foreverのレビュー・感想・評価

最低。(2017年製作の映画)
3.8
【距離感】

「AV女優」を題材にした映画ってね、結構ダークな感じになるんだろうねっていう想像はしていた。いわゆる「訳アリ」な女の子たちが、終着駅のように身を落とす場所のように描かれるというか・・・まぁ古いんだろうけどね、そういうのって。

今作は「AV」に関わってしまった3人の女性が主人公。
一人は北海道から東京に上京して、気が付けばAV女優として生計を立てている「職業としてのAV女優」。もう一人は夫との生活に隙間風を感じ、満たされない気持ち、夫の気持ちをこっちに向かせたいというきっかけからAVに出演してしまう主婦。そして母親が過去にAVに出演していたことが学校にバレて自分の居場所がわからなくなる女の子。

AVをテーマにしているだけあって描写は結構生々しかったですよ。下手なAV観てるのかと思うくらい「今のシーン、ボカシなしで大丈夫?」ってこっちが恥ずかしくなっちゃうくらいに。
でもね、なんかイヤらしくないんですよね。悲しいんです。職業と割り切っているから。本当は乗り気じゃないけど、旦那の気持ちがこっちを向いてくれていないから。だから彼女は旦那に「友達と温泉に行く」と嘘をついてAV出演に向かう朝、「たまには息抜きしておいでよ」と送り出す旦那に「やっぱ、やめようか?」と呟く。本当はどこかで気付いて欲しかった。本当は心のどこかで止めて欲しかったから。

で、3人の主人公たちはバラバラのお話で進みますが、実は至るところでリンクします。
これが、そんなに「無理やり感」がなく、割とすんなり受け入れられた。

でね、職業としてAV女優をしている子の親が釧路から上京して、なんとか辞めさせようとするんですね。だけど彼女は言うことを聞かない。子供の頃から母親との関係が上手くいっていなかったのもあって、母親も「小さい頃からあんただけは何を考えているのかわからなかった」と本音を漏らす。きっと彼女もやりたくてAV女優をやっているわけではないんだろうなって。どこかで母にこっちを向いて欲しかったんだろうなって思った。

母親がAVやってたという子は、辛いよね。現実としてこの状況を考えたら。
万が一、自分の家族がそうだったら僕はどう対応していいか自信がない。感情のままに怒るのか、それとも受け入れてあげられるのか、あるいは途方に暮れるだけなのか・・。

結局「娘がAVをやっているという事も含めて包み込んだ母親」がいた。
「妻がAVに出たという事実が受け入れられずに狼狽した夫」がいた。
「母がAV女優だったという過去が自分にとっての烙印だと運命を呪った少女」がいた。

どれも正解なんてない。みんな普通なんだと思う。
これはAVだから色眼鏡で見てしまうというだけ。

自分にとって理解の限界を超える事態を突きつけられた時、人間って弱いよなって感じる。

これはAV女優たちの背負った苦悩ではなく、その周囲の人たちが背負ってしまう業の深さを描いた作品なんだと思う。
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