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最低。のりのレビュー・感想・評価

最低。(2017年製作の映画)
3.9
最低。という題名が示す通り、登場人物の女性陣全てが最低だ。AVに出演し、周囲の人間を不幸の渦中へと引きずり込む。なんて親不孝で馬鹿野郎なんだろう。という女性蔑視的な帰結で終わってはならない。何故か、本作では女の最低さに照準を絞っていたが、そもそも人間って皆最低なんだと思う。人前ではいい面をしていても、裏ではどんな悪事を画策しているか分かったもんじゃない。脳内で誰かを殺しているかもしれないし、噂話や陰口の吹聴をしているかもしれない。純愛を標榜している奴は平気で浮気や不倫に走ってしまうし、ボランティア精神が大事だと崇高なことをほざく奴は、自己陶酔かSNSの「いいね」集め目的に過ぎない。好きなタイプに「いっぱい食べる君が好き」などと言う奴は紛れもなくデブを嫌悪するし、「清潔感さえあれば」などという女は小綺麗なブサイクを嫌う。というダブルスタンダードな現実を見ると、声高高に「裏がある人は嫌い」「浮気するとか人として有り得ない」などとほざく人間に滑稽さを感じる。この感性は元々備わっていたが、本作を見てさらに強化されたように思う。
彼女たちがAVに出た理由もここにあるのではないか。本性は最低なのに、あたかも「無難さ」「普通」「いい人」「真面目」っていう仮面を被り、役を演じている。それに疲弊して仮面を脱ぎ捨て、最低な自分に回帰したかったのではないか。仮面を被り続けることは息苦しく、とてつもなく辛い。だから、何処かで仮面をとって深呼吸しなければならない。ある者は恋人の前で、ある者は匿名のネット世界でそれを脱ぐ。本作の女達は、主婦を含めてそのような関係性を構築できなかったのだろう。だから、AV女優という仕事に就くことで、己の最低さを顕在化させ、「最低な私」をさらけ出したのではないか。
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