greg

この世に私の居場所なんてないのgregのレビュー・感想・評価

4.2
"この世に私の居場所なんてない"

ジェームズガンのスーパーという映画がありまして、それにとても似ております。

日々の良いことなしの生活にうんざりし、人生の意味を失った主人公が、ある日目覚めて世直しを考える。途中で少し頭の狂ったサイドキックが現れて、事態は思いもよらない凄惨な展開に… そして、基本はオフビートギャグコメディ。

見始めて数分でこれはスーパーぽいぞという気分でいたのですが、ここまで似てきて驚きました。そしてスーパー大好きな身としては、もちろん大好物です。

スーパーとの共通点ばかり言っても説得力がないので今作に戻ると、一つ一つの描写もとても丁寧です。序盤の「好きな小説の話をできると思ったらネタバレされる」などの小さな不幸の積み重ねも上手いですし、感情を閉じ込めてしまっている主人公の変化する姿も細かく映ってます。

物語自体はとても小さな話です。最終的な敵として出てくるキャラクターも、実は大きな悪からのけ者にされた存在であるという描写もあります。ファーストカット(見上げると木々)から円環構造になったラストシーンで示されるのは、そんな小さな世界の片隅にあるもっと小さな愛のようなもの。

この世に私の居場所なんてない、そう思った主人公に訪れたものの優しさに、ほっと胸をなでおろしました。それが現実であろうとなかろうと関係はないのです。
greg

greg