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バーバラと心の巨人のneroのレビュー・感想・評価

バーバラと心の巨人(2017年製作の映画)
3.5
邦題のせいで気が付かなかったが、ケン・ニイムラ/ジョー・ケリー によるグラフィックノベルが原作だった。日本で以前雑誌掲載されたときに目にした覚えがある(調べたら2012年に一部だけIKKIで公開されていた)。ちょっとクセの強い絵柄だったためもありちゃんと読んではいなかった。妄想女子の成長モノらしいということしか覚えていない。

映画では、自分の妄想に囚われる”痛い”少女バーバラが見事に表現されていて、転校生のイイ子ちゃんソフィアとの対照性も際立っていた。やがて来る”巨人”を倒すため、日々自分に課した日課をこなすバーバラ。「何故巨人なのか?」という”謎”へのヒントは少ない。謎の餌付けやトラップ、秘密武器にルーン文字など、単なる中2妄想炸裂中のヤバイ子に見える。

描かれる人間関係はシンプルだ。校内の図式的には、変人認定で孤立するバーバラ、敵対するいじめっ子タイラー、間で気をもむイイ子ちゃん転校生ソフィア、問題児に悩む校長、そこを心理士モル先生が見守るという構図だ。
一方で姉弟三人暮らしの家庭内の構図が最初ちょっと捉えにくかった。途中、姉と兄がイケナイ関係なんじゃ・・・とか邪推してしまった。おかげでバーバラの深層意識がドコに向いているのか捉えきれず、モル先生の反応も含めちょっと混乱してしまった。「孤独のススメ」なのかと思ったりね。年取るってヤダねえ。

少々世界観が捉えにくいのは否めない。嵐の中”巨人”に雷神の戦槌で立ち向かうクライマックスなど魅せるシーンはあるが、フィクションとしての盛り上がりにはやや欠けるのも確か。バーバラの心理が見えてくると一気に涙腺崩壊するタイプの映画だ。大人ならモル先生に感情移入する人が多いかもしれない。

そして風景描写が実にいい。ニュージャージーの海沿いの町が舞台だが、ブルーグレイッシュな色調で、寂しくも美しい海と森を様々なアングルで見せてくれる。同じ東海岸だからというわけでもなかろうが、昨年観た「マンチェスター・バイ・ザ・シー」と同様の風景自体の存在感を強く感じさせる映像だった。

公開スクリーン数も多くないし、おそらく評価はそう高くならないんだろうが、いい映画だと思う。原作本(もちろん日本語版:Amazonで試し読み有り)ポチった。
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