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バーバラと心の巨人のkrhのレビュー・感想・評価

バーバラと心の巨人(2017年製作の映画)
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グラフィックノベルが原作の、「心の巨人」と戦う女の子の話。
巨人の意味するところがわかってからは、そのこと自体にはとてつもなく胸が締め付けられるような想いこそすれ、散々言われているようにネタバレ邦題で物語そのものの見方が変わってしまい、もう色々と台無しという感じ。

前半、巨人の存在がいかなものであるのかを、観客自身もある程度探るようなパートであるだろうはずなのに、ただでさえその存在を肯定するのは彼女だけという状況の中で、それがイマジナリーなものでしかないことをタイトルによってあらかじめ知ってしまっているので、彼女があまりにも痛々しい完全なる中二病患者にしか見えなくなってしまった。物語上、彼女自身の人間的魅力にも焦点が当てられないし、彼女は周囲とのコミュニケートも棄ててしまっているわけで。
実際は、終盤明らかになるように、あれは子供ながらに「存在を脅かすものへのどうしようもない恐れ」と戦う強い姿であったはずなのに。
この邦題はあまりに罪深いのでは…

「巨人」そのものが「実在」しないことが劇中でもはっきりしていて、さらにリアリティラインがかなりシビアに現実寄りに設定されているので、ファンタジーに振った描写に乗り切れなかった。実際に起きたことと、メタファーとしての巨人の存在を、複雑に絡めたビジュアルで見せる必要があったのではないかと思う。きっとグラフィックノベルでは問題にはならない描写でも、実写ではキツイよね、という話。
例えば、タイタンに掴まれてぶん回されるとかは現実じゃありえないわけで。死の気配が彼女自身に迫る中で、母親に迫る死を彼女がはっきりと受け入れる大事な場面なので、フォローもないのにそこをまるきりファンタジーとしての画面で見せるのか…という感じ。

子役ちゃんたち含め、女性陣が大変素敵で好みだったし、ファンタジーロマンある小道具や地下室の可愛らしさはとても良かったです。
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