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ゆれる人魚のslowのレビュー・感想・評価

ゆれる人魚(2015年製作の映画)
4.1
80年代ポーランドを舞台に蘇る童話『人魚姫』。
ジャンルとしてはミュージカルとダークファンタジーを融合させたような定義するのが難しい作品となっていて、ミュージカルも力強く歌い上げるわけではなくライトでポップ(でも妙にクセになる楽曲達)、ファンタジーも人によってはホラーと感じてしまうかもしれない。

登場する人魚は『シェイプ・オブ・ウォーター』のようにお金と時間をかけた特殊メイクのそれではない(あれは半魚人だったか)。クオリティで言うなら『モンスター変身する美女』などの、いわゆる昔の手作り感満載のあれ。こういうチープだけれど世界観で攻める映画は好物。異種間交流と音楽を軸に据えたという点では『パーティで女の子に話しかけるには』の雰囲気にも近いのではないかな。

本作のアグニェシュカ・スモチンスカ監督や、『君はひとりじゃない』のマウゴジャタ・シュモフスカ監督。古き良きと言うよりは、現代ポーランド映画の独特なユーモアで攻める新進気鋭の女性監督達の活躍が目覚ましい。ならではの繊細且つ大胆な感性にゾクゾク。これから作品を撮るにつれて、さらに切り口やメッセージも研ぎ澄まされていくのだろう。これは楽しみ。

かつて少女だった者達は、数々の通過儀礼に触れ、大人になり、社会への船出を迎える。しかし、社会には少女であることに商品価値を見出し、何も知らないことを利用する者も存在する。時には少女自身がその身を安売りしてしまう場合もあるのかもしれない。本作を観ていると、これは現実問題であり、おとぎ話などではなく、人魚(少女)は架空の生き物などではないと思わされる。少女である不自由さと思春期の息苦しさ。それは水から這い出た彼女達そのものだった。
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