売春防止法施行に直面している吉原の娼婦たち(若尾文子など)が、艱難辛苦を乗り越えながら、新たなる旅立ちを目指そうとする。伝統ある色街の終焉と焦燥を描いている、ヒューマン・ドラマ。溝口監督は本作の公開後に死去している。
「娼婦としてのアイデンティティの崩壊」「娼婦からの脱出不能状態」をテーマに取りながら、窮地に立たされている女性たちの偶像劇を描いていく。後のポルノ映画で採用されるモチーフの原型を推量することができる。
当時の風俗をリアルタイムに落とし込んでいるため、フィクションとドキュメンタリーが渾然一体になっている。娼館の内部が克明に描写されており、裸の臀部が一瞬だけ写り込むという、当時の映画としてはスキャンダラスな場面も登場する。
劇伴では、日本における電子音楽の先駆者・黛敏郎が参加。手作り感満点の初期サンプリング・サウンドを堪能することが可能。一寸先が暗闇の状態を、禍々しい電子音で表現することに成功している。