マクガフィン

ビブリア古書堂の事件手帖のマクガフィンのレビュー・感想・評価

ビブリア古書堂の事件手帖(2018年製作の映画)
2.9
ポスターの印象から、日常の謎を解く、ほのぼの系人情劇かと思いきや、ライトミステリに驚く。原作・漫画未読。TVドラマ未見。

情報が少ない古書から読み出すことは、鋭い推理なのか特殊能力なのか判別不能。小説なら成立できていると思うが、映画だとキツい。その能力をあっさり受け入れる男たちも如何なものか。

ミステリー要素は薄味で、犯人捜しの含みをもたらしているかもよく分からず、犯人の動機や狂気も宙ぶらりんで、アクションは評価の対象外に。
古書のうんちくは、古書の価値や物語に関連することばかりで、説明的で味わい不足に。何気ない古書に関するエピソードも必要だったのでは。物語の重要なファクターなので、作品がブレた原因に。また、一番描きたいことが伝わってこなく、ヒット原作の一番支持されている要素が何なのか、まるで分からないのも問題に。

そんなこんなだが、東出昌大の蠱惑的な雰囲気が漂う過去パートが面白く、東出と夏帆が抱き合う海辺で、海の波が左右から斜めに混じり合う背景描写が秀逸。ギルティな東出とイノセントな野村の対比も興味深いが、古書が紡ぐ過去と現在は散漫して、纏まりに欠けることに。

映画的に物足りなく感じたのか、終盤の意味不明なカーチェイス・バトル・ダイビングを盛り込むなら、丁寧な背景描写を積み重ねた方が良かったのでは。
東出は、今作は助演だが、「菊とギロチン」「寝ても覚めても」も素晴らしく、2018年の主演男優賞の筆頭候補に。