motoietchika

アラーニェの虫籠のmotoietchikaのレビュー・感想・評価

アラーニェの虫籠(2018年製作の映画)
3.5
むちゃくちゃ評判悪いのでそれなりに覚悟して観に行ったら意外と良かったので、統合失調アニメが好きで虫が苦手でない方はぜひどうぞ。
ざっくり観終えた印象としては、統失と自己啓発の話だなーという感じ。

アニメーションはけっこうすごいです。(一人でやってる、というのが分かってたので評価が甘くなってるかもしれませんが)キャラを3DCGで動かしてても違和感なく背景になじんでいたり、作画のメリハリも強くて飽きない画。とくに背景へのこだわりはすごい。新海誠の『秒速』よりも出来はいいかも。時代を感じます。
これは別に褒めても貶してもない喩えなのですが、大阪モード学園のCMみたいな映画だと思った。

ただし、良くも悪くも同人アニメという印象は拭えない。
特に脚本はへったくそなんだけど、「話がよく分からない」というのは別に悪いところではない。
統合失調のイメージを体感させてやる! という熱意は感じたし、もし「どこからどこまでが幻覚で現実か」というのがはっきり分かってしまうと、それこそクソつまんなくなるんじゃないか。

ヒロインの一人が登場するシーンで、突然のバレエの舞踊をしたあとの第一声が
「奈澄葉。私の名前」
だったのはマジでゼロ年代感マックスで優勝! って感じでした。
完全にエロゲの世界じゃないですか?

全体的にセンスが古いんですが、そこはけっこう好きだった。キャラデザとかも。

所々に監督の好きな作品からの引用というか影響を感じる部分があったりして、そこも楽しかった。たぶん『さよ教』とかプレイしてると思う。

楽しかったし凄い作品だと思ったけど、個人的にはこのストーリーラインはあんまり好きではなかったかな。
内的な心理世界のなかで、勝手に過去のトラウマとか問題を解決してるだけ……みたいな、自己啓発的なプロットはどうしてもしょぼく見える。
内的な心理描写をねっちり描きつつも社会とか、そのなかでの位置づけとかをもう少し描いてほしかったと思う。新海誠よりも世界が閉じている……。
まあ統失極まるとそうなっちゃうけどな……

それから、わりと普通にちゃんと怖い。そこも良かった。団地の初登場シーンではちょっと笑ってしまったが。
motoietchika

motoietchika