アキラナウェイ

ナンシーのアキラナウェイのレビュー・感想・評価

ナンシー(2018年製作の映画)
3.2
気になっていた映画がU-NEXTで観れると知って飛びついた。

彼女はナンシー。
ボサボサの髪。
光を宿さない瞳。
母との会話に苛立ち、
彼女が心を許すのは猫のポールだけ。

派遣社員として働く歯医者で、
「北朝鮮に旅行した」と嘘をつく。

次から次へと口を開けば嘘が出る。
嘘は自分を隠し、守る為の処世術。

母は呆気なく死んだ。

そんな時、娘が行方不明になり、30年もの間娘の帰りを待つ夫婦がTVに映し出される。当時5歳だった娘の、現在の姿をCGで再現した顔写真を見て、ナンシーの瞳にほんの少し光が差した様だった。

自分と瓜二つの写真。
私がそうなのかも知れない。

夫婦への接触を試みるナンシー。

いつもの彼女の嘘なのか。
はたまた本当に彼女は5歳の頃に育ての母に誘拐された、彼らの娘なのか。

DNA鑑定の結果が出るまでの数日間。
期待と不安が入り混じりながら、夫婦とナンシーの、ぎこちなくも、それでいて温もりを感じる日々が流れる。

もっと、ナンシーの虚言癖が酷いかと言えばそうでもなく。サイコスリラーな恐ろしさでも見せてくれるかと言えばそうでもなく。家族なのか他人なのか、はっきりしない不明瞭な関係の中で、抱き合い、共に踊り、心を寄せ合う3人。

ノーメイク、無表情、ボサ毛のナンシーをアンドレア・ライズボローが確かな演技で惹きつける。スティーブ・ブシェーミ、ジョン・レグイザモ、脇を固めるキャストも素敵。

ただ、いかんせんパンチが足りない。
もっと狂おしい程の人間模様が見たかった。
作品のキーワードである「嘘」をもっと活かす事も出来たのでは?

嘘で塗り固めないと他人の前に立てないナンシーが、ただただ悲しい。