やわらか

Ryuichi Sakamoto: CODAのやわらかのレビュー・感想・評価

Ryuichi Sakamoto: CODA(2017年製作の映画)
3.8
一生のトータルでみると坂本龍一のCDはかなり買っていて、オリジナルアルバムだけでも15枚くらい、ライブやベストを合わせると30枚近いんじゃないかと思う。さらに、矢野顕子やら山下達郎やら、ゲスト的に参加したアルバムまで入れると数え切れないほど。
 
そんな自分ももはや坂本龍一の音楽を耳にするのは、家のスピーカーやイヤホンではなく、たまたま観た映画であったりネットで流れて来たチャリティの動画であったり。。。
 
さてこの映画、坂本さんのキャリア全般を振り返るような内容で、YMOや初期の映画音楽、LIFE辺りで社会向けメッセージが強くなり、2011年以降の反原発運動に参加するところまでを『現在の教授』の視点から観ているような感じ。YMOのライブでは細野さんのスラップも映っている。ああ麗しの80年代。
 
こうやって通しで観ると、やはり2000年ぐらいからの社会活動をどう評価するかと言うところなのかと思う。正直劇中で、反原発の同士達とともにガイガーカウンター付けたバスで福島第一原発付近に行ったり、防護服着こんで海辺に立っている姿を見るとなんだかなと思う。
 
そういうカッコイイ(?)ことやってる一方で、この人はいろんなところ浮気したり子供作ったりする。で、バレたり揉めたり。この辺同じ年齢のサラリーマンの行動や発言と大して変わらない感じ。音楽は凄いけどキャラクターはごくごく普通の人なんじゃないかと。そんな教授の姿をカッコ悪いと感じるのは、自分にもあるカッコ悪さを見ているのかもしらん。
 
もうひとつ映画で描かれるのが癌との闘病で、現在では病気の兆候は全くないものの、再発をかなり恐れていると述べている。もちろんタバコは吸わないし、食事にも気を使って、仕事も制限する。でも、昔は禁煙できなくて、矢野顕子に隠れてこっそりタバコ吸ってるのを忌野清志郎のエッセイに書かれてしまったりしていた。清志郎が東洋医学に走ったり治療後にすぐ仕事再開して再発させてしまったのを反面教師にしてるのかなぁ。
 
そうやって考えると、この年代のアーティストはもはや存命であることだけでもありがたいような気になってくる。社会活動もヒット曲が出せなくなった分時間の使い方としてはありなんだろうと。普通の人として生きて行く限られた時間を、これまでの活動に対する感謝を込めて、祝福してあげたい気持ち。
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