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アトミック・ブロンドのneroのレビュー・感想・評価

アトミック・ブロンド(2017年製作の映画)
3.5
原作グラフィックノベルの映画化権を自ら取得し、プロデュースまで自分でやってしまうほどにシャーリーズ・セロンのめり込みのスパイストーリー。
1989年11月、世界を左右する極秘スパイリストを巡ってベルリンに暗躍するスパイ達。MI6、KGB、MfS、DGSE、CIAと各国が入り乱れ、誰が敵か、何が真実か、判然としないままに壁崩壊のその日を迎える。エスピオナージとしては面白い題材だ。

極度に彩度を落とした映像が空気の冷たさと静けさを感じさせて、いかにも影の戦いを想起させる・・・んだが、実は結構なガチマッチョアクションの連続。ちょっとばかりミスマッチかな。
それと、エージェント・ロレーンの”超”ファッショナブルさに較べて、タイトルなどのテキスト処理はいまいちダサく、B級の下っぽさを醸してるのが残念。画面の色彩設計なんか渋くていいのにねえ。

シャーリーズ・セロンとソフィア・ブテラの絡みシーンが見られたのは眼福だけど、原作への思い入れが強すぎたんじゃないか? 映画としての出来はちょいと疑問。
原作でもMI6のエージェントが報告を始めるところからスタートしているが、映画でこの構成をとる必然はあったのだろうか? セロン姉さんの肉弾アクションと騙し合い謀略戦とがどうもチグハグさを感じるんよ。どっちかにしたほうが良かったんじゃないかなあ。
活劇重視なら、もっとシンプルに時間軸に沿ってジェットコースターアクションで吹っ飛ばしたほうがいいし、諜報戦重視ならアクションは最小限に頭脳サスペンスとして展開したほうが活きたと思うんだよなあ・・・。 まぁリーチ監督のアクションは確かに魅せるけどね。

個人的には後者推奨。さり気なく入れ込んだ情報量を活かすためにもクールな謀略戦展開が見たかったね。壁崩壊にまぎれての脱出行とソレを狙うスナイパーってアガるシチュエーションだし、あの傘行進なんかすごい決まってたのに、直後のド派手アクションで印象薄れてしまうのがもったいないよ。
こっちの展開なら、映画版オリジナルキャラ・デルフィーヌ(とDGSE)との関係なんかももっと彫り込めただろうに。デルフィーヌはもうちょい大人っぽくミステリアスにして、できれば百合対決に持っていって欲しかったが、それは趣味に走り過ぎってもんか。
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