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アトミック・ブロンドのLATESHOWのレビュー・感想・評価

アトミック・ブロンド(2017年製作の映画)
3.6
てっきりブロンディー「Atomic」使われてるかと思ったのに
それはないんすね...。
ボウイとイギーに映画館でよく出会う年だった。
贅沢に使用される80年代の曲の意味が鑑賞後にわかって、より面白くなった。
ベルリンの壁崩壊の最中に
ファッキンファッキン言いながら
男達をガチに殴り倒す
バイセクシャルなズタボロのスパイって
旧価値観の壁も破壊してますね、セロンさん。
ストーリーにやや難はあるものの
(コートを脱げと言った直後に着ろはバレバレだ...)
共産圏と資本主義の地下通路を奔走する彼女は
自らのアイデンティティーを確立したくて必死なのだ。

自分がシャーリーズ・セロンを知ったのは駆け出しの「2days」やウディ・アレン作品、「ノイズ」等で、その頃は金髪が似合うスレンダー美人さんの印象だった。
「モンスター」で醜女の殺人犯を演じアカデミー受賞した際は、え?そんな演技派だったんか?という驚きが多少あった。
「イーオン・フラックス」やウィル・スミスをボコる「ハンコック」、トドメの「マッドマックス」フュリオサ大隊長で
この人は抗いを生き甲斐とする強い女性像を根付かせようとしてんのかな?と次第に考えるようなった。
きっとこの人は、プラスティックなブロンド美人になりたくないのだ。
男性目線のか弱い女性像に
逆らい続けたいのだ。
アトミック・ブロンドは
峰不二子でもボンドガールでもない。
トム・クルーズやジェイソン・ステイサム、マット・デイモンの女性版という訳でもない。
男に利用されていた「ニキータ」や
アイコンから脱却しきれなかったミラ・ジョヴォヴィッチともまた違う。
バイセクシャルであり
傷だらけの顔と身体を氷風呂に沈めて晒け出し
レザーの手袋とガーターベルトで武装して
長回しのスタントなしガチファイトを展開し
てめー誰がメス犬だ!と
野郎共の喉元ブッ刺す彼女は、
80年代のプラスティックな肉体に
2010年代の精神を注入した。

いつまでもワインスタイン共にベッドインを強要されてると思ってたら大間違いだぜ。
悔しかったらシャーリーズ・セロンよりクールにウォッカのロックを飲み干してタバコに火をつけてみろってんだ。
しみるだろうにおかまいなくクールな眼で一気に流し込む覚悟がなきゃいかんのよ。

部屋着でBOY LONDONを着てるのが素敵でした。
タルコフスキー「ストーカー」が上映されてるスクリーンをバックに格闘するの、ちょっと罰当たりなくらいに贅沢ですね笑
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