Filmoja

アトミック・ブロンドのFilmojaのレビュー・感想・評価

アトミック・ブロンド(2017年製作の映画)
3.5
東西冷戦下のベルリンを舞台に繰り広げられるスパイアクション。
巧みに仕掛けられたトラップをかいくぐり、卓越したスキルで任務をこなすシャーリーズ・セロンのタフな強さと、ファッショナブルな美しさに魅了される。

渾身のバイオレンス・アクションは圧巻で、円熟の女優が演じるものとしては、おそらく最高ではないか。
ハイライトの長回しシーンはリアリティーの極致で、“殺し合い”という表現がしっくりくる。いくらでもテンポ良く見せられるところを、あえてカットしないことで、より鮮烈に痛々しさが伝わってくる。

誰にも媚びないクールな女が、ボロボロになりながら屈強な男たちをなぎ倒す描写は、これまで抑圧されてきた女性たちのリベンジとなぞらえると穿ち過ぎだろうか。主人公が唯一、素顔を見せる愛と安らぎの対象が男性ではないのも、それを象徴しているように思う。

劇中で引用される「騙す者を騙すのは愉快」というセリフ通り、巧妙な心理サスペンスの要素もあり、一筋縄ではいかない展開に引き込まれるけど、人物相関が複雑で分かりにくく、些か凝りすぎた感は否めない。スリムな脚本で純粋にアクションを楽しみたかったというのが正直なところ。
冒頭の任務報告に繋がる伏線に意外性を持たせ、ストーリーにもう少し明快さがあれば完璧だった。

青のネオンライトがシーンを彩り、80'sポップスがエモーショナルにシンクロする演出がスタイリッシュに炸裂する痛快作。
ちなみに共演のソフィア・ブテラ、ミステリアスで妖艶な演技が素晴らしく、「キングスマン」とはまた違った雰囲気に見惚れてしまった(笑)。これからの活躍が楽しみな女優。
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