亘

静かなる復讐の亘のレビュー・感想・評価

静かなる復讐(2016年製作の映画)
3.6
2015年マドリード。バルで働くアナは、夫クーロの出所を待っていた。クーロは8年前に強盗事件で逮捕されていたのだ。夫の出所を控えたある日アナはバルの客ホセと出会う。2人は恋に落ちるがホセは正体をアナに明かしていなかった。

タイトルの通り、静かな男ホセの復讐を描いた作品。復讐といえば韓国映画だけど、今作には韓国映画のようなジメジメ感はなく執念がまとわりつく感じはない。なんとなく無機質な感じ。でもそれがホセの淡々とした感情のない殺人マシーンのような感じと重なっていて、恐怖を増していたと思う。

ホセはアナに正体を隠したまま、アナの夫クーロにだけ正体を明かし復讐を遂行する。話が進むにつれホセの目的が分かり序盤のアナとのラブストーリーが恐ろしく思えてくる。

8年前の強盗事件では、覆面の男たちが宝石店を襲い、中には死傷者もいた。ホセは妻を殺され、父を寝たきりにされたのだ。8年の時を経て犯行グループは、もう当時を忘れたのか楽しそうに話をするがホセは無表情。ホセの静寂が彼の怖さを引き立てていた。

特に怖かったのはクーロだろう。初めはホセを見くびってたしホセを殴ったりしたが、いざ復讐が本格始動するとホセは次々犯行グループを冷酷に殺し続ける。いつしか立場が逆転してホセが指示する側になるし、きっと自らの行く末も決まっている。あの雄々しいクーロが怯んでいく姿は印象的だった。

ラストは、意外で少し拍子抜けしてしまった。ただなぜホセはクーロを生かして帰したのか謎が残るし、この後に更なる展開があるのか観客に想像の余地を残すラストだった。

印象に残ったシーン:ホセがクーロとともに犯行グループの元を訪れるシーン。クーロがトランクに入れられるシーン;まさに立場逆転を描いていた。クーロをアナの元に返すラストシーン。

余談
・原題"Tarde para la ira"は「怒りには遅い」という意味です。
・NETFLIXでは「物静かな男の復讐」という題です。
亘