ドント

全員死刑のドントのレビュー・感想・評価

全員死刑(2017年製作の映画)
3.8
ただただ無茶苦茶で、面白かった。『孤高の遠吠』などの実録実演不良モノで鳴らす小林勇貴監督初商業映画。実際に起きた一家皆殺し事件を、犯人一家の次男の視点から描く。
乱暴に挿入される説明字幕。おかしな編集とカメラワーク。へんな間と妙な笑い。音楽。本作以前の、半分意図された乱雑さと計算された初期衝動の作風をそのままにコノヤロー!とばかりに「実録」映画を撮りこましてしまった強引っぷりにまず拍手。一方で監督の作風を知らない人はだいぶ面食らうはずだ。「映画」としては所々稚拙とすら見える。だが時にギラリと光る刃(銃絡みのシーンの厭さ! 地方都市の撮り方!)。いわばこれはロックにおけるパンクみたいなモンなのだと思う。それはそれとしてもまだだいぶ荒削りではあるし、悪ノリが空回りな部分もあるのだけども。
短絡的な人間のヘッポコさを描きながらも、振るう/振るわれるの間にいる、「暴力を振るうよう命令される者」が主人公であることで、暴力の行使における人間関係の歪み、権力構造まであぶり出してしまう(“イケメン”の間宮が主人公を演じることでそれが際立つ)。この構造はヤクザでなくとも、どこにでもあるものだ。会社でも家族でも。コワイデスネ。アッパーでダウナーで、笑えるけど笑えないムービー。
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