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全員死刑のhi1oakiのレビュー・感想・評価

全員死刑(2017年製作の映画)
4.0
まずこの作品を観て“どの辺が事実でどの辺が映画的な脚色なんだろう”という点が気になったので、映画館を出てすぐに原作とも言える『我が一家全員死刑』に加筆・修正を加えられた『全員死刑 大牟田4人殺害事件「死刑囚」獄中手記』を買って読んでみた。タイトル通り死刑囚一家の次男による手記を元にしたノンフィクション。
映画は登場人物の名前や容姿体型、時代設定は変えてフィクション化。さすがに映画の中のYouTuberのくだりやエロ関連のシーンは脚色だった。ただそれ以外はだいたい手記通り。作中に漂う“凄惨な事件なのに笑えてしまう”感じも手記も同じ。
ただ、だからと言って“事実”を描いているのかと言うとそれは微妙。本を読めばわかるんだけど、次男は著者に長男と両親への面会を禁じているので、“次男の言う事を全て信じるのであれば”というカッコつきの“事実”。
実録犯罪モノというよりは「悪魔のいけにえ」のレザーフェイスや「サイコ」のノーマン・ベイツが、実際の殺人鬼エド・ゲインから着想を得ているように、この作品も実話ベースのフィクションなのかなと。
劇中での幻覚描写(手記には無い)を見ても明らかな通り、この映画は主人公である次男をシャブ中として描いているので、“何故こんな事をしたのか”とかを追求する話ではないんですよね。要は心情を理解したりする必要が無い話。できるわけがない。
しかしそれを笑いながら面白いとおもってしまう気不味さと罪悪感。その時点で観客の負け。加害者家族も被害者家族も“全員死刑”というダブルミーニングタイトルに、観客にも罪を被せてくる。巧い。
清水葉月が脱がないのにエロい。これも手記には無い映画独自の見どころ。
残念なのは、劇中の音楽の使い方が良かったのに、エンドロールの曲が作り上げた雰囲気をぶち壊してたこと。監督の友達とかなのかな?
あと主人公達の車が多摩ナンバー…。
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