ぐるぐる映畫

全員死刑のぐるぐる映畫のレビュー・感想・評価

全員死刑(2017年製作の映画)
4.3
大牟田4人殺害事件の手記を映画化。

小林監督の他の映画は未見なのですが、この監督凄いですね…こんな怪作出てきたら他の監督たちは現実に起きた犯罪映画を今後撮りづらくなったんじゃないですかね?

この題材で連日満席状態で今まで劇場に来ないような人たちが劇場に足を運んでいる姿を見るとそう言わざるを得ない状態である事は間違い無いと思います。

こういった現実に起きた犯罪を取り扱う事に対して賛否両論ありますが、個人的な意見としてこういった事柄を映画やドラマで取り扱う事には大賛成です。

こういった事件をニュースで見て「やだー怖いねー」で終わらせていいんですかね?人が死んでるんですよ?

なぜこのような事件が起きたのか?
なぜこの人たちはこんな事をしたのか?
それらを知る必要があるし、事件について考える必要があると思います。

そして、もし自分がそういう事件に巻き込まれる可能性があった場合にどうすれば回避できるのか?という事も知る必要がある。

社会は理不尽なもの。
外へ出ればその理不尽が降りかかってくる可能性があるという事を頭に入れておかなければならない。

僕が好きなラッパーが書いたリリックに「親父は俺が外へ出ようとするとよくこう言った。決して目立つな。カルマにはくれぐれも見つかるな」というのがある。

カルマには法則というものがあるらしく
ようは因果応報みたいなもので、行いによって良い事や悪い事が決まっていく。その行いの中の危ない事が起きる予兆の時に自分でブレーキをかけれればカルマからは見つからないし、逃げる事が出来る。

そのブレーキを自分で「知る」必要がある。

「知る」という事が出来れば考える事が出来る。想像ができる。
逆に知らなければ考えたり想像する事が出来ない。

だからこそ「考える」というアクションを起こす為に「知る」という事は大切な事だと思います。

本作では、そんな「知る」という事を小林監督はエンターテイメントにして伝えるという手法を取っている。

これには最初、驚いたし不謹慎だという批判もありました。しかし、監督がこの凶悪で悲惨な事件に対して誠意というもので答えている姿がそこには見えた。

先ずは、人が死ぬシーン。
ここまで丁寧に間を省略せずに人が死ぬシーンを生々しく描いている映画はあまり見た事が無い。
人が死ぬということはこういう事なんだ
命というものはこんなに重いものなんだ
という事をしっかりと提示している。

そして、この悲惨で凶悪な事件をコントのように楽しくエンターテイメント性を持たせ昇華させている。
人間、嫌なものはすぐに忘れようとするものですが楽しい出来事は覚えている。
これによって見る側の記憶に残り、ふとした瞬間にこの事件の事を思い出す。

これは小林監督がこの事件を風化させないように、この事件についてより多くの人が考える事が出来る為に取った手段なのかなと思いました。

今後の日本映画にいろいろ影響を与えるであろうこの「全員死刑」
間違い無く小林監督は日本映画をぶっ殺いに来てますね。