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全員死刑のLATESHOWのレビュー・感想・評価

全員死刑(2017年製作の映画)
3.6
てめえでケツ拭けるのが前提として、映画の中じゃ何やってもいいんだと久々に認識させてくれた邦画。

不埒にして不謹慎、
監督の炎上なんか知ったことかという情熱が伝わってくる。

短絡的で凶暴で母ちゃんに頭が上がらねえくされヤクザ一家。
よくニュースで少年犯罪の心の闇だとか生活環境とか
知った風なことぬかす奴がいるけれど、
馬鹿って怖いんだぞ、「カッとなってやった」なんだぞ。
無計画通り越した行き当たりばったりのなすりつけ合いの、家族の為に!と無理くり理由つけて、一回首絞めただけじゃ死なないから嫌々何度も殺るんだぞ。
漫画によくある狂気の微笑なんか嘘だ。
もう馬鹿で馬鹿過ぎで、
小心者で実に卑怯な奴らで、
刹那的とかサイコパスなんて言葉が勿体無いくらい
無様な馬鹿さ加減に、不謹慎な笑いがついこみ上げてしまう。
鳥居みゆきを殺す場面の頭の悪さといったら!
監督のおもうツボ。
ノータリンな音楽と地方の澱み腐った空気、
馬鹿達がしきりに口にする
「ぶっ殺(さら)う!」。
人殺し共を嗤ってやろうぜ。
めんどくさがりで手を汚そうとせず、
すぐ立場が弱い者に任せたがる屑が人を殺すとどれだけ間抜けか。
人を殺すとめんどくせーんだぞ。

血走った眼の間宮祥太朗が
苛立ち銃口を向け方言で怒鳴る場面で急にひりついた空気になるのが好きだ。
盗撮魔を暴行する場面、予算がないから雑草で荒れ放題の地方の道路、殺しに行く家にズカズカ入り込む長回し、
それらに付随するなんとも嫌な空気。
目上に逆らえずなすりつけ合う暴力社会の惨めな一面。
六平直政のチンケな感じと
それを上回るどうしようもない小悪党な兄貴。
たとえば毎日頭の中で殺人ゲームを考えこねくり回してるやつに
この不謹慎な笑いは作れないんじゃなかろうか。
暴力を実際に体験し、その怖さと虚しさを身を持って知っているから作れたんじゃなかろうか。

被害者一家の繋がりや人間像が
もうちょい見えてくれば...とも思ったが
実録だしエンターテインメントに
徹するべくあえて削ったのかな?
自販機のじいちゃんの気持ち悪さがリンチっぽい。
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