テイアム

96時間のテイアムのレビュー・感想・評価

96時間(2008年製作の映画)
3.9
物語の内容はパッケージ裏のとおり。
パリで東欧系の犯罪組織に娘を誘拐された政府の元特殊工作員の父親が、あらゆるスキルを駆使して娘を奪還するまでを描くタイムリミット・アクション。

この映画には、派手な演出やアクション等、見た目の激しさ以上に、主演のリーアム・ニーソンが魅せてくれる鬼のような演技に強く惹き付けられた。
特に印象深かったのが「誘拐犯に対し電話口で“宣戦布告”するシーン」と「犯人のアジトと、旧友の家を訪ねるシーン」。

怒りに震える主人公からゆっくりと捻り出すように表現されるそれは、正に「冷酷な凄み」(パッケージ裏の表現を拝借)

彼が感情に任せて激しく怒り狂うのではなく、冷静な判断力に基づいて“相手を殺す”と決意した瞬間、人の心の奥底にある最も冷たいものに触れてしまったような感覚を覚える。
冷静に言葉を選びながらも、口調の奥深いところで相手を見据える確かな殺意に、私は鳥肌が立った。

観客が引いてしまうほどの異常なまでの執念は物語の終わりまで一切緩むことはなく、エスカレートしていく主人公の言動を見ていると、悪役より彼の方が恐ろしく感じます。

序盤に見せたあの優しい表情からの変貌振りを誰が想像できるんだろう。

ヒーローなら悪人に筋を通して勝つからこそカッコイイものの、このオヤジは悪には悪で対抗することも厭わない。
たとえ罪の無い誰かに銃口を向けようと、相手を拷問しようと、娘を想う純粋な気持ちの元で実現しようとすることは、彼にとっては全てが正しいことなのだろう。

善悪は水波の如しとはこういうことだ。

それにしてもこの役、彼以外にできた役者はいただろうかと想像を巡らせるが、この作品を鑑賞した後ではまともに考えられない。
サム・ライミの『ダークマン』での彼も、ある種常軌を逸した一面を見せてはいたけれど、当時表現されていた「怒り」とは種類が全く違う。
この作品の後に決まった『Aチーム』の主演といい、今後アクションスターとしての彼の出演作は更に増えていくのでしょうね。
とても楽しみ♪

作品の設定こそスティーブン・セガールが演じ尽くしているようで、その本気度はジェイソン・ボーン並みの作品。
リュック・ベッソンが一口噛んでいるだけにアクションは重たくなく、展開の早さも観る者を飽きさせないので最後まで充分楽しめると思う。