アイリス

96時間のアイリスのレビュー・感想・評価

96時間(2008年製作の映画)
4.0
ナメてた相手が実は殺人マシーンでした系ムービーの超傑作だというのは間違いない。
構成も演出もアクションも一級品で、何よりも終盤の山場での緊張感が最高に心地良い素晴らしいアクション映画。

でも、それは表面上の感想に過ぎないのではないか、全体に物凄い暗さが漂ってる……というのは考え過ぎなのか。

父と娘のおかしな関係。
超一方的な愛情。
気持ち悪いアルバム。
人生を無駄にしてるような生活。
嫌がる元妻と娘。

そんな中起こった誘拐事件→救出劇。
異常な愛情が、たまたまハマって輝いただけではないか。
まず起こり得ないような奇跡を描いただけではないか。

帰ってきても、一通り軽く感謝されるだけで何も変わらなかった。命懸けで人殺しまくりながら守ったのに。
娘の台詞も、出発する時と全く同じ「I love you.」。
なんなら空港からの帰りの車でさえ、もうバラバラ、はい元通り。皮肉ではないか?

最後に歌手の家を2人で訪ねるシーンがあるけど、これも一見、娘との関係性の変化と取れるが、よく考えるとそうでもない、娘の本心が読み取り切れない絶妙な演出。(本当に歌手になりたいのか?あの表情・リアクションは心からの喜び?)

ここまで来ると、娘役のキャスティングにさえ意図を感じてしまう。だって殺された友達の方が可愛いもん。

全体に漂うそんな悲壮感が、このアクション映画に切なさを加えて、ワンランク上の作品に仕上げている……はい考え過ぎですよね、すみません、大人しく続編観ます。
アイリス

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