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あしたは最高のはじまりのtmcてむしーのレビュー・感想・評価

あしたは最高のはじまり(2016年製作の映画)
3.8
2021年44作目

ストーリー
思うがままに暮らしていたサミュエルは、ある日突然現れた昔のワンナイトの相手クリスティンから強引に赤ちゃんを渡される。
サミュエルはクリスティンを追ってロンドンで暮らし始めるが、音沙汰のないまま8年がすぎ、赤ちゃんだったグローリアと立派に親子関係を築いていた。


冷静に、心が重たくなるタイプの作品でした。いい悪いは別として、パッケージがハチャメチャに爽やかだったから、もっと笑顔で終わる作品かと思ってたんですよ。
こういう不意打ちやめて…弱いのよ…不穏な空気にも不穏なモノローグにも耐えられないのよ…

子供の頃に父に言われた、崖から飛べという指示がずっと心に残っている主人公。
この映画では、高いところから飛び降りることが重要なキーワードになっています。
飛び降りること=男になること、覚悟を決めること。
あの頃怖くてたちすくんでいたサミュエルも、最後には「人生には、崖から飛び降りるよりも大きな覚悟を持って挑むべき場面があるのだ」と学ぶ、人生の教科書的映画です。

サミュエルの成長を描く映画でもあるので、序盤のサミュエルはまさに自分の好きなことしかできない子供。
好きに遊びまわっていたツケが、セックスしたことすら覚えていない相手クリスティンから渡された
自分の人生で最愛の人となる娘、グローリアです。
最初は狼狽して思わずロンドンまで来てしまったサミュエルですが、グローリアを育てているうちに段々と家族や守るものの大切さ、尊さに気づきます。

物語が進むにつれてどんどん雲行きが怪しくなっていくので、グローリアとサミュエルの気持ちを思うと切なくなります。
8年ぶりに現れたクリスティンの振る舞いは側から見ても気持ちの良いものではなくて、気持ちが落ち込みます。
それでも許すことを大前提としているのはやっぱり宗教的なものなんですかね…
文化的背景がないと理解できない心理かもしれません。(少なくとも私には無理!)

最後のグローリアとサミュエルの逃走は、2人の絆が現れていて素敵なシーンです。
ずっと一緒にいてほしい。幸せになって欲しい。人の幸せを心から願えます。