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あしたは最高のはじまりのdeenityのレビュー・感想・評価

あしたは最高のはじまり(2016年製作の映画)
3.5
すごく愛に溢れた作品。突然父親だと言って赤子を押し付けられ、母親を追ってロンドンまで行くが金もない、英語も使えない、子育ての術もない、おまけに母親の行方もわからない。そんな絶望的な状態に立たされたサミュエル。
「恐怖は飛び込んで手なづけるのが大切。」
父親の教えだ。その意味は当時わからなくても、まさに今が人生においての絶望というなの恐怖で、そこに飛び込むしかないのだ。

この作品はサミュエルの人生を歩んだストーリーであり、主として親子愛が根幹にあるわけではない。サミュエルの人生における重要な1ピースだ。
しかし作品の展開上、超名作の『クレイマー、クレイマー』と重なる部分が多々出てくる。サミュエルはいきなり父親になって8年間娘を育て上げ、そこに突然現れた母親が娘を連れて行くと裁判を持ちかける。
ひどい母親だと思った。「いやいや、大前提としてあんたが捨てたんだろ。」主になるテーマは違うのはわかっているが、ストーリー上どうしても親子の関係が大きな比重を置くため、親子の映画に見えてしまう。

するとやはり分が悪い。『クレイマー…』の方は母親側に非はあって憎たらしいものの、父親にも非はあり最後には母親としてまっとうしていた。ただ、本作の母親に素晴らしいと感じる要素は見当たらない。明らかにサミュエルの方が親として素晴らしい。その点で重みも薄れる。オープニングのアニメーションとか所々でコメディ要素を織り交ぜているのだから下手にシリアス路線に持っていかなくてもよかったのにとは思う。

ただ父親としての愛は立派で、娘の笑顔のために、笑顔がずっと続くために、彼は嘘を突き通した。
「必要な嘘もある。」
きっと彼女は幸せだったはずだ。
子役の子も素敵だったが、何より優しい笑顔を持ったオマールが素晴らしかった。
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