アキラナウェイ

あしたは最高のはじまりのアキラナウェイのレビュー・感想・評価

あしたは最高のはじまり(2016年製作の映画)
4.3
優しい嘘

フランス人サム(オマール・シー)の前に突如現れた一夏の恋人クリスティン(クレマンス・ポエジー)。彼女は「あなたの娘よ」と生後3ヶ月のグロリアをサムに預け、ロンドンへ帰ってしまう。急いで追いかけたものの無一文になってしまい、異国の地で娘を育てる事になったサムの物語。

安定のオマール・シー。

彼の演技は魔法の様。人生の一瞬一瞬を魔法の様に輝かせるサムの魅力をあくまで自然体で演じ、観る者を惹き付ける。

母に捨てられたグロリア。

その残酷な真実を告げるのなんて後回し。そんなのは大人になってからでいい。今はグロリアが笑ってくれればそれでいい。そのサムがつき続けた優しい嘘。嘘にだって愛が宿る。しかも笑える。

サムが同性愛者の親友ベルニー(アントワーヌ・ベルトラン)と共にグロリアを育てた8年の描写はあっという間。秒単位で大きくなっていくグロリア。この編集が雑だと感じた人も多い筈。省き過ぎだと。

でも、僕は好意的に受け取りました。

だって人生は、Time flies(光陰矢の如し)だから。

僕も娘と息子を育ててきたのでよくわかる。本当にあっという間。親の目線での体感速度をよく表している。

全体を通じて展開はスピーディーで、特に終盤は二転三転していく物語。颯爽とグロリアが駆け抜けて行く様に映画はラストを迎える。やっぱり泣いてしまう。

完璧な親などいないし、父親と母親が一緒にいられない家庭もいっぱいある。

最悪な状況に見えても最大限の努力を惜しまずに。
最低な状況に思えても最高の愛を注ぎ続けて。
それが親の最低限の務め。

娘を一度は捨てておきながら、サムからグロリアを奪い取ろうとする母親の姿にイラつきもするけれど、人間なんてそんなもの。自分の罪を棚に上げて、権利だけは主張する。

サムとグロリアの過ごす家がとても素敵で、あんな家に住んでみたい。それはきっとめちゃめちゃ幸せ。

爽やかな涙で心を洗濯してまた明日に向かって生きていける。そんな映画でした。