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南瓜とマヨネーズのNMのレビュー・感想・評価

南瓜とマヨネーズ(2017年製作の映画)
2.5
未熟なまま恋愛に翻弄されていく女とその周囲の物語。
原作ファンは、映画は別物と捉えて観るのが良いようだ。むしろ読んでいない人にお薦め。

ヒロインは売れないバンドマンと同棲中。
二人分の生活費を稼ぐべく、ライブハウスだけでなく、スナック、愛人契約と深みにハマっていく。
それを知った彼はついにバイトを見つけ寝る間も惜しんで働きだし、音楽活動をしなくなる。

自分を見失ったまま昔の男とも浮気をするが、どちらも好きでどちらかを選ぶ判断もできない。彼氏の方から振ってくれたらと思っていた。
ついに彼氏が別れを切り出す。だが実際されると気に入らない。
再びバンドを始めるが方向性が変わったように見える。それも気に入らない……。


冒頭ヒロインは「自分が何をしているのか分からない」と数度独白したが、それは自分への言い訳のようでもある。考えがまとまらない、だから私に責任はないのだ、と言い聞かせているような。
愛されたい、必要とされたい、安心したい。長期的視野がなく、目先の心地良さに流されてしまう。
自分の存在意義を証明しずっと一緒にいてくれる人なら誰でもいいのだろう。

せいちゃんは確かに一時経済的支えが必要な状態ではあったが、ずっとその状態でいて欲しいという要求はやはり不健康に思える。

ハギオと再会し、好きで追いかけ回し妊娠したが黙って堕ろしたという経験も、ヒロインの昔から変わらない依存的性格を現している。

行動力や母性はあるのだから、せいちゃんの言うとおり良い人と出会えさえすれば平和な人生を送れそうなものの、出会えていない以上彼女一人ではどうしようもない。

ヒロイン宅は常にゴミ袋が溜めてある。何かの象徴だろう。

二人の男が鉢合わせする様子を無邪気に笑って見ているのシーンは、まあ取り敢えずはそれでも良いのかな、完全に正しい人間関係なんて世の中にどれほどあるのかな、とも思わせた。

ついにせいちゃんが声を聴かせるシーンは非常に良かった。今まで全然歌っていなかったことにやっと気付いた。
せいちゃんからのお礼にも思えた。ヒロインが一番欲しかったもの。直接的な言葉ではないが何だかヒロインがモデルのようにも思えてしまう。
だが、その前にはっきり、お前のために作ったんじゃないしと言っていた。誠意と優しさを見せてくれた。

というか大賀(現・仲野大賀)の歌唱が素晴らしく、一節歌うだけで作品を完結させるという役割を充分に達成している。
オダギリも良かった。本当にこういう人なのではと思わせる。
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