このレビューはネタバレを含みます
総じてライティングが綺麗。
後半は原作の漫画とかなり違う。映画版はすっきりまとめた印象。
若葉竜也の演技が良かった。
序盤のツチダが働くライブハウスで馴染みの客と会話しているシーンがあったのだが、二人の音楽のノリ方が独特で面白かった。
オダギリジョーがクズだった。
同棲の墓場みたいな雰囲気の作り方が上手。擦り減って平坦になった生活に、無理やり起伏つくろうと過剰な褒め合いをしたり、反対にほんの小さな摩擦でひどく幻滅したり、ありがとうとごめんの食傷で気持ち悪くなる感じとか、内輪でしか感情を上下できない様子が観ていてしんどかった。外界と自分たちを切り離して、都合の良い国を作って、救われたつもりになって、だけど直面している問題は何も解決していない現実が辛かった。
せいいちが機材を売り払おうと整理するシーンが印象的だった。ツチダはキッチン越しに引き止めるが、せいいちはもう必要ないんだという。力なくしゃがみ込むツチダと共に、それまで見えなかったキッチンの中が画面に映される。シンクに溜まった洗い物、奥には山積みにされたゴミ袋。何もしないで音楽だけ作っていればいいと言ってたツチダが、せいいちの実生活のズボラさを責め立てる。見ないふりをしていた暮らしの行き詰まりや淀みが露出する場面のように思えた。
ツチダがせいいちに振られる時、彼女がお風呂場の前でしゃがみこみ、側面にあったカメラが正面に回り込んでいく過程で、手前にあった空間が壁に潰されるようになくなっていく動きは、二人に先がないという事を暗に示しているようだった。
終わり方はさっぱりしていた。