こうん

ビジランテのこうんのレビュー・感想・評価

ビジランテ(2017年製作の映画)
4.5
映画監督入江悠の、今の名刺となる代表作です!

久方ぶりのオリジナル企画で郷里を舞台に、なんだかヴァイオレントなノワールということで興味津津だったのだけど、期待に違わぬ素晴らしいドラマでした。

隅から隅まで気が漲っていて、特にキャメラワークとロケーション、それに主演の三人の芝居は非の打ち所がない!

特に鈴木浩介さん。
あらゆるものに雁字搦めでそれでも喜んで泥水を飲まなければならない、あの挨拶シーン…まさかオレ、泣くとは思わなかった。
すべての苦々しい葛藤が集約された名シーンです。
「ロードサイドの逃亡者」におけるマイティとIKKU &TOMの再会シーン並みに苦しく、しかしとんでもないカタルシスがダダ漏れの一幕でした。

物語のモチーフとしては「サウダーヂ」と重なる部分が多いんだけど、本作の方が古典的なドラマの密度とフィクショナルな強度が高められていて、現代日本のダークサイドとしてカリカチュアされているとも言える。

そしてそれが絵空事ではなく地に足ついたストーリーとして語られ、そのテリングの中の圧倒的なディテールが、超説得力あるんだ。

深谷周辺の北関東の閑散とした風景があんなに魅力的なんて!
なんてことない川、なんてことない空き地、なんてことない空、なんてことない住宅街、なんてことない駅前、なんてことない焼肉屋や中華屋がなんて映画的なことか!

それから前述の通り主演の三人が素晴らしいことに加えて、あの街に徘徊する魑魅魍魎の様々な顔!顔!顔!そしてデリヘル嬢(みんないい子)のリアルな体型!
あの大迫組組長演じる般若さんの恐ろしさたるや…韓国系焼肉屋にあるステンレスの箸に僕は生涯ビビり続けるでしょう。

地方都市・地縁・家族・権力・歴史・経済・暴力・男と女…そして地下で根をはる容赦ない金という悪意!
スコセッシ作品のマフィアものやジェームズ・グレイの初期作を彷彿とさせる家族ノワール、ホントに素晴らしかったです。サイタマ版「総長賭博」と言ってもいいな!
快哉!

入江監督にはいつかハードなノワールを取って欲しかったしその素質があると思っていたのですけど、その願いが叶って、いちファンとしては大満足です!

万人にはおすすめしませんが、スコセッシ好きは必見です!いいから観とけ!
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