たつかわ

ビジランテのたつかわのレビュー・感想・評価

ビジランテ(2017年製作の映画)
3.3
サウダージと逃走シーン

本作は監督がインタビューで言っていたように「サイタマノラッパー」の大人版というべき作品です。ただお馴染みの長回しは基本控えめで、ここぞという所で長回しを使う手法で撮影されている点では違います。

長男(大森南朋)は失踪し30年ぶりに実家に帰ってくる。次男(鈴木浩介)は頼りない市議会議員、三男(桐谷健太)は真面目なデリヘル店長。

富田克也監督の「サウダージ」では本作と同じように地方の都市、外国人労働者などを焦点を当てた作品で、役者ではなく現地の人を使って撮影したドキュメンタリータッチなものでした。しかし、本作は有名な役者を使い、3人兄弟を主人公にすることでエンターテイメント化しているので、全体的にだれることなく比較的観やすい作品になっています。また、セリフを極力減らし説明が少なくなっていますが、例えば長男の顔が見えた瞬間に30年の苦労が滲み出ていて、正直大森南朋だと認識できなかったぐらいの表現をしていたり、またオープニングシーンで父親が3人を殴っているのが、本当に痛そうで俳優たちが素晴らしい演技をしています。

残念だったところは、逃走シーンです。「サイタマノラッパー3」では、同じようなシーンがありましたが、あの長時間の長回しの中だから、仕方がないと思いました。しかし、今回は見逃すことができません。例えば、逃げている人が遅く移動しているのに、追っている人が全く見えないので、一切緊張感がありません。そして少し具体的になりますが、外国人が暴力的行為を行って逃げる際に、追う人間がわざと転んでいるように見えたりと、まるで警官のコントのような追い方をされると萎えてしまいます。そのために自宅に帰った後に、口直しに三男と同じ職業をキムユンソクが演じ、逃走シーンが素晴らしいナホンジン監督「チェイサー」を観ました。

残念な部分もありますが、20億を超えたヒット作品を出しながらも、このようなテーマで映画を作っていることを認識できたのは良かったと思います。
たつかわ

たつかわ